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【連載】Peatix共同創業者/CMO 藤田祐司氏に聞く、これからのコミュニティマーケティングとコミュニティの活用方法

時計2022.05.31

更新2022.06.14

Peatix Japan株式会社

当たり前が当たり前ではなくなり、生活そのものが一変したこの2年。ビジネス、マーケティングにおいても例外ではなく、顧客やユーザーとの新しい繋がり方の構築が必要になった2年でした。

今後、マーケティングにおいて人との繋がり方はどのように変化していくのか。

ユーザー数840万人、日本最大級のイベント・コミュニティ管理サービス「Peatix(ピーティックス)」創業者の一人であり、コミュニティマーケティングを牽引してきたPeatix CMO (Chief Marketing Officer)藤田祐司氏、Peatix広報の宮田真知氏(以下敬称略)に、コミュニティマーケティングについて改めて伺うと共に、これからのコミュニティ運営のポイント、人との繋がり、そしてコミュニティマーケティングの今後までお聞きしました。

コミュニティマーケティングとは

コミュニティマーケティングとはどのようなものか、改めてお聞かせいただけますか。

【連載】Peatix創業者 藤田祐司氏に聞く、これからのコミュニティマーケティングとコミュニティ活用の方法

コミュニティマーケティングはここ数年で聞くようになったなという言葉で、特にここ1〜2年は記事でも見るようになってきました。企業が経済活動を活発にしていくために、企業の事業やサービスを使って下さっているお客様・ユーザーをコミュニティ化して、そのコミュニティを活用することでさらにその経済活動を進めていく、というようなアプローチになりますね。

ユーザーコミュニティによるマーケティングの手法、というものがコミュニティマーケティングである、と考えています。

以前はマーケティングの方法というと、例えばテレビコマーシャルなど「企業が直接ユーザーにアプローチしていく」方法が多かったと思います。

一方コミュニティマーケティングでは、企業と消費者の間に、その企業の製品・サービスを使ってくれているユーザーがいます。そのユーザーによるコミュニティが世の中や消費者にサービスの良さを伝えていくという流れがあるんです。やはり企業が「私たちいいですよ」「このサービスいいですよ」というよりは、実際に使っている人たちが「あれいいよ」と言った方がメッセージが明らかに消費者に届く。端的に言うと、そこがポイントだと思います。

いわゆる以前のマスマーケティングのようなやり方から、少し違うアプローチ手法が増えているのかなと思いますね。

特に、今は様々な情報があふれている時代です。たくさんの情報の中からどれが本当に自分にとっていい情報なのかを消費者の方が選ぶ時に、近しい人とか、自分の所属しているコミュニティの人たちの「これいいよ」「面白いよ」という声のほうが、情報として取得しやすいと思います。そういうアプローチの仕方がコミュニティマーケティングだと考えています。

ただ、コミュニティマーケティングを色々調べていくと、実施している 企業様によって解釈が微妙にずれていたりするのです。コミュニティマーケティングを「新規の顧客獲得のためのもの」とフォーカスされている企業様もいれば、「既存顧客のエンゲージメントも含めて考える」と解釈をされている企業様もいらっしゃるので、まだまだ固まってない分野ではあるのかなと思います。しかし少し広く考えると、企業の直接のコミュニケーションではなく、間にユーザーさんがいるアプローチ、マーケティングの手法であることは確かなのかなと思っていますね。

コミュニティ自体が企業のブランドや信頼になり、アピールしてくれる存在というイメージでしょうか。

そうですね、そこがすごく大きいと思います。

やっぱりそのサービスを使って「いいな」と思っている人しかコミュニティにはいてくれないと思うので、いわゆるやらせ感は非常に少ない状況ですし、ロイヤリティが高まっているお客さんが伝えてくれる。

あとは問題を解決するという要素もあって。例えばコミュニティがしっかりと醸成されると、何かそのサービスに対してわからないことが発生しても、すぐに「これだよ」と、企業ではなくコミュニティのユーザー同士で解決されるんです。

そうしてコミュニティが上手く育ってくるとマーケティングを越えて、カスタマサポートのような役割を担い始めます。

手探りと挑戦の繰り返し『「コミュニティ」づくりの教科書』ができるまで

藤田さんご自身はどういった経緯でコミュニティマーケティングが大事だと思われたのか、きっかけとなる出来事はありますか。

Peatixのサービスが立ち上がったのが2011年5月なのですが、1番最初にPeatixを開発しているちょうど最中に東日本大震災が起きました。

元々Peatixは、もっとエンターテイメントや音楽のシーンで使われるのではないかと考えていたのですが、時期的にそれらの活動は自粛の雰囲気になりました。その一方で、震災復興のために何が出来るかを皆が考え、社会が動くという世の中になっていたのですね。

例えばNPOも増えましたし、震災復興支援のためにたくさんの人たちが様々な活動を開始した同じ時期に我々のサービスが始まったので、より“コミュニティのパワー”を感じるタイミングでした。

Peatixとしても、震災復興の支援のための活動を積極的に支援しました。いわゆる商業ベースのライブなどではなく、そういった草の根のコミュニティ活動を応援することが最初のスタートとなりました。

「サービスの拡大」から「コミュニティ作り」へ

2017年頃にたまたま参加したイベントで、行政も一緒に渋谷エリアを活発にするために集まっているコミュニティがあることを知りました。そのコミュニティ内で6つほどグループを作り、グループごとに「このエリアを元気にするために何ができるか」を考えるワークをされていたのですが、その中間発表にたまたま参加したことがあったんです。

皆さん真剣に渋谷エリアのために考えていて、今まで自分では思いつきもしなかったような切り口を発表されていました。例えば「落書きが問題だよね」「じゃあどうしていこうか」と考えて、具体的なアクションまで決めて、みんなで応援しながら人を巻き込んで作っていくというのを、その時に目の当たりにしたんですね。

コミュニティ支援は2011年から行っていましたが、それまであまり見えていなかったホントのコミュニティのパワーのようなものに、ここで改めて気付くことができました。

「あ、これ凄いな」「やっぱりコミュニティのパワーってすごいんだな」というのを自分事として体感したので、さらにそこから自分自身もコミュニティづくりを重視するようになりました。

それまでは、”サービス”としてPeatixを広げていくことに集中していたのですが、そこからは改めて自分自身も“コミュニティづくり”をやろうと再認識し、活動していきました。Peatix誕生のタイミングや、ふと参加したローカルコミュニティのイベントが原点となって今のPeatixに繋がっています。

そのようにご自身でコミュニティづくりに関わっていく中で、著書「コミュニティづくりの教科書」が出来上がっていったのでしょうか。

そうですね。共著者の河原あずさんともやはりイベントを通じて親交が深まっていました。「コミュニティは面白い」「コミュニティづくりをやりたいと思っている」という話を一緒にしていました。

であればということで、コミュニティコレクションというイベントシリーズをあずさんとPeatixで始めました。渋谷エリアのコミュニティビルダーの方々を25人ほど集めて、2時間語り合うようなイベントを開催したんです。

そこから数年間、何度もイベントやコミュニティづくりに携わっていくと、「どうやってイベントをやったらいいか」とか「コミュニティづくりをどうやったらいいか」とよく聞かれるようになりました。調べても体系化されているものがあまり無かったので、「これはもしかすると本にすると良いんじゃないか」とういう話になり、いい編集者さんと出会って「じゃあやってみよう」となった感じですね。それが2020年、もう2年前ですね。

コミュニティづくりの教科書の名前の通り、ステップが細分化・体系化され非常にわかりやすいと感じました。お話を伺うと、元々まっさらなところからコミュニティづくりを始められたと思いますが、当初はどのくらいまで今のノウハウと同じことを想定されていたのでしょうか。

最初始めたときは正直そんなに深くは考えていませんでした。

最初僕はコミュニティを作っている方に興味を持ったので、そういった方たちの話をいっぱい聞きたいな、というところから始まったんです。

コミュニティを知れば知るほど、「もっともっとコミュニティを知りたい」と思うようになり、であればコミュニティ作りをしている方々に集まってもらって、その人たちとの繋がりを作っていこうと考えました。元々Peatixがコミュニティ支援をずっと行っていたので、ありがたいことに2011年から凄く沢山のコミュニティ作りをされている方達と繋がり、話をずっと聞いていました。

僕自身一人一人に興味が湧くのですが、「この人とこの人が出会えば新たな化学反応が起きていくのでは」という思いが生まれ、イベント主催者のコミュニティを作ってみました。コミュニティビルダーの方々をどんどん集めて掛け算を生み出すことを意識したんです。

一人一人が皆さんコミュニティづくりを行っているのですが、そういった人たちが集まるコミュニティを作ると今度は何が起こるのだろう、と気になり実際に作ってしまったという感じですね。

手探りと挑戦の繰り返しで作ってこられたのですね。

そうですね。そういった意味では、コミュニティマーケティングをされている方も、コミュニティ作りをされている方も皆さん感じていると思うのですが、コミュニティは生ものなので、本に書いてあるものをこの通りやれば、全て上手くいくのか、というと全然そういうことは無くて。いろんなことが起こっていく中で、対応していく必要、考えていく必要があると思います。

本やセミナーなどヒントはもちろんあると思いますが、やはりその中から「あ、自分達にこの部分は合うな」というエッセンスを拾って、チューニングしながら実戦していくことが必要です。

なんでも導入して、その施策がそのまま綺麗にはまるということはないだろうと思いますが、そこが面白いところでもあるかなと思います。

生ものである以上、ノウハウ通りにやれば出来るというものではないですよね。ノウハウを知ってもなかなか踏み込めないという方も結構いらっしゃると思うので、藤田さんご自身が作り上げてきた過程は凄くためになると思いました。

本の中でも書いていますが、最初は本当に少人数から始めたほうが良いです。

企業体で動くと、最初は「大きくイベントをやって人を集めよう」と考える方も多いと思いますが、コミュニティの本質を考えると5人とか10人からで良いんです。いつもサービスを使ってくださっている方に会議室に集まって貰い、そのサービスに対するフィードバックを貰うことから始めるのが良いと思います。いかにこの最初の一歩を小さいステップで踏み出せるようにするかというのがポイントだと思います。

最初にKPIを決める、売り上げを伸ばす、というところから入ってしまうと、おそらく上手くいきません。予算が付かなくなり、じゃあコミュニティ活動やめましょう、となってしまうので、最初がすごく肝心だと思いますね。

次へ続く

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Peatix(ピーティックス)

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