変化する消費者に対し、マーケターはどのように対応していくべきか?
2023.03.01
2023.05.22
Micoworks株式会社
マーケットの変動やテクノロジーの急速な進化に伴い、現在、社会が大きく変容しています。
常に移り変わる消費者の行動をどのように解像度高く捉え、近づいていくのか。絶対的な答えがない中で、数多くのBtoB企業は手探りでマーケティング施策を行っています。
今回の連載では、試行錯誤しながらBtoBマーケティングの取り組みを最適化し、成功に導くための取り組みを、Micoworks株式会社がご紹介。
「実践から紐解く、BtoBマーケティングの最適解」と題した連載シリーズでお届けします。
目次
Micoworks株式会社とは
Micoworks株式会社は、SNSマーケティング支援を行う企業です。現在はLINEを活用した、コミュニケーションプラットフォーム「MicoCloud(ミコクラウド)」を開発、提供しています。最適なSNSコミュニケーションによって、ブランド価値を最大化し、あらゆるビジネスの可能性を広げます。
第一回テーマ「変化する消費者に対し、マーケターはどのように対応していくべきか」
withコロナ時代における消費者の行動と価値観の多様化
マーケットの変動やテクノロジーの著しい進化に加え、2020年から現在にまで続く新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、ここ数年で消費者を取り巻く環境は目まぐるしく変化しました。
第一回では、複数の調査結果をもとに消費者の行動変容を紐解き、今、マーケターがアクションを起こすべきことについて解説します。
コロナという未曾有の脅威が世界を襲った2020年、消費者は今までの行動様式から、感染予防と経済活動を両立する新たな生活様式への転換を余儀なくされました。行動が制限され、急変した日常生活の中で、自分にとって大事なこととは何か、本当に心を満たすものは何か、自分らしく生きることとは何か、今まで向き合っていなかった側面に目を向け、価値観が大きく変わったという人も多くいるのではないでしょうか。コロナの収束が見えない中、人々は新たなライフスタイルや毎日を楽しむ方法をそれぞれ見出し、順応する柔軟性をすばやく身につけていきました。
それから3年が経ち、withコロナ時代へ突入した2023年。昨年から徐々に行動制限が緩和されたことで、消費者の思考や価値観に再び変化が生じます。今年の1月にマクロミルが行った新成人に関する調査のアンケート結果では、新型コロナウイルスに対する考えに対し、「感染予防対策をできるだけ意識している」ものの、「感染者数が増加しても、外出は制限しない」という人がいずれも半数以上を占めていることがわかりました。コロナ禍では感染リスクを抑えるために外出を制限する人が大多数でしたが、現在は感染対策を講じつつ、日常を取り戻そうとする流れになっています。しかし一方で、コロナ禍が収束しても今のライフスタイルを維持したいという人が一定数を占めているのです。
マスク生活、リモートワーク、オンラインショッピングやオンラインライブ…ここ数年で定着した新たなライフスタイルは、消費者の日常に大きな影響を与えました。それによって個の意見を大事にする人が増え、消費者の考え方や行動、価値観はますます多様化しているのです。
顧客との接点 〜もはや生活にスマホは欠かせない〜
それでは、メディアと消費者との接点はどのように変化してきたでしょうか。実用面においては、第一回目の緊急事態宣言による外出自粛要請で自宅時間が増え、仕事からプライベートに至るまで、スマホやPC、タブレットでインターネットのサービスを利用する機会が急増しました。
それを裏付けるように、2022年に行われた各メディア接触時間による調査では、初めてスマートフォンがテレビのメディア接触時間を上回りました。2006年から2010年までは、テレビが他のメディアと大きな差をつけていましたが、その後、スマートフォンの普及拡大によって消費者が接触するメディアの分断化が加速し、2022年、ついに携帯電話/スマートフォンが3分の1のシェアを獲得します。
ひと昔前までは動画コンテンツといえばテレビ一強でしたが、今では教育系からハウツー、音楽、趣味まで幅広いジャンルと豊かなコンテンツ量を持つ「YouTube」が全世代から支持されています。また、海外発のNetflixやAmazon primeなどに加え、国内でもTVerやHulu、Abemaといったオンデマンド型の動画配信サービスが立ち上がり、インターネット経由の動画配信サービス市場がさらに活況を迎えています。テレビ番組の見逃し配信も好調で、「決まった時間に自宅でテレビ番組を見る」スタイルから、「自分が所有するデバイスで見たいときに好きなコンテンツを試聴する」スタイルへと消費者の動きがシフトしつつあります。つまり、スマートフォンで動画コンテンツを視聴することが消費者にとってスタンダードなものへと変わりつつあるということです。
インターネットのメディアを利用する時間が増えた背景には、コロナ禍によるおうち時間が増えたこと、そして移動中やちょっとしたすきま時間、ながら時間に、簡単に操作できる利便性が、多様化するユーザーのニーズにマッチしたことが大きいでしょう。
コミュニケーションはスマホから
NTTドコモ モバイル社会研究所が実施したスマートフォンや携帯電話の所有に関する調査結果(※)によると、2010年はスマートフォンの所有比率が4%程度だったものが、2010年から年々増加し、2022年は94%に達しています。総務省が発表している「令和3年通信利用動向調査/世帯構成員編」においても、世帯の保有割合が88.6%、個人のインターネット利用機器はスマートフォンがパソコンを上回り、20〜49歳の約9割が利用していることがわかりました。
では、スマートフォンは実際にどのような用途をメインに使用されているのでしょうか。
※全国の15〜79歳の男女7,050名を対象としたwebでのアンケートによるもの。調査時期は2022年1月。
スマートフォンの利用目的としてもっとも多いのがSNS、ついで無料動画の視聴、ゲームと続きます。無料動画に関しては、先述したYouTubeの視聴が結果に反映されていると考えられます。
70%の消費者が週3日以上、利用するSNS。そのなかでも利用者数上位を占めるのが、LINE、Instagram、Twitter、TikTokです。とくにLINEは新型コロナウイルスに関係なく、2015年ごろからコミュニケーションや連絡ツールのひとつとしてすでに定着しています。TwitterやInstagramはLINEに利用率が及ばないものの、情報収集に利用したり、暇つぶしに見たり、自分の好きな世界観を保存したり、多様なニーズで利用されているようです。
SNSのなかでも注目すべきはTikTokの大躍進でしょう。当初は認知度が低く利用率が横ばいだったものの、10〜20代の若者を中心にユーザー数を着実に増やし、現在ではFacebookを追い抜くまでに成長しています。気軽に投稿したり、暇つぶしに楽しめたりするショート動画ブームが続いていることは、2月1日から収益化が始まったYouTubeショートのニュースでも明らかです。
スマホで簡単に人を惹きつけることができるショート動画は、消費者を擬似体験へと誘いやすく、消費行動を後押しする広告手法としても注目されています。サイバーエージェントによる「2022年国内動画広告の市場調査」では、2022年の動画広告市場規模が昨年比の133.2%で5,601億円を、スマートフォン向け動画広告需要は前年比132.7%の4,621億円を記録したことが記されています。2023年はさらに市場が増えて7,209億円に、2026年は1兆円を超えると見込まれています。これらの結果が意味するのは、SNSや動画など、多くの消費者が持つスマートフォンを活用した多様なコミュニケーションが求められているということです。
SNSを活用したマーケティングは、もはや“MUST(マスト)”。
これらの調査結果を踏まえマーケターにとって重要なポイントは次の3点です。
・消費者の行動変容は、企業が変化を受け入れてトレンドに追いつくより早いため、消費者が望むコミュニケーションに合わせてスピーディに動かなければならない。 ・スマートフォンユーザーが今後も増え続けることを想定し、SNSでのマーケティング活動に注力する。 ・多様化する価値観と行動に合わせた情報発信とコミュニケーション。 |
これらの変化へ対応するには、デジタライゼーションではなく、迅速なデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が必要不可欠です。デジタライゼーションとは、FAXや印鑑の廃止など、アナログで行っていた業務フローの一部をデジタル化することを指しますが、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」によると、DXは次のように定義されています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること” 参考:デジタルガバナンス・コード2.0 |
新しいマーケティングツールを導入したり、やみくもにチャネルを増やしたりするのではなく、これからは多様化する消費者に合わせたマーケティング手法へと変革していかねばなりません。
消費者をとりまく環境は日々、変化し続けていますし、チャネルも多種多様にあります。ユーザーがどのチャネルで接点を持ったのかによって、興味・関心度や温度感は異なりますし、それに伴い、提供すべき情報や体験も変わってきます。ですから、思考や価値観、行動を想定した体験を設計し、消費者一人ひとりの行動とニーズに合わせてカスタマイズした最適なコミュニケーションをとっていきましょう。
変化に対応するのは非常に大きな労力が必要ですし、戦略を構築したり、体制を組み直したりと、決して容易なことではありません。しかし、一方で大きなチャンスだと捉えることもできます。この大きな変化に対応できるかどうかが、今後の成否をわけていくと言えるでしょう。私も同じマーケターとして頑張りますので、どこかでお会いできましたら、お互いの成果を語り合いませんか。
大里 紀雄 プロフィール
Micoworks株式会社 ビジネスマーケティング部 Director
大里 紀雄
大手Web制作会社にてチーフデータアナリストとして、DMPの構築および活用支援、広告運用の業務に従事。マルケトではシニアビジネスコンサルタントとして業種業界を問わず、大手企業から中小企業まで、MAツールの導入や戦略構築支援を行う。 その後、複数の事業会社で大規模カンファレンスの企画運営や、オウンドメディアの構築などのマネジメント、アジアパシフィック地域のマーケティング戦略立案や広報活動など幅広い業務を経験し、現在に至る。