「PODs」体制によるエンタープライズにフォーカスしたマーケティングを
2023.09.19
2023.09.19
Micoworks株式会社
マーケットの変動やテクノロジーの急速な進化に伴い、現在、社会が大きく変容しています。常に移り変わる消費者の行動をどのように解像度高く捉え、近づいていくのか。絶対的な答えがない中で、数多くのBtoB企業は手探りでマーケティング施策を行っています。今回の連載では、SNSマーケティングを支援するMicoworks株式会社が自社のBtoBマーケティングの実践の取り組みをご紹介。「実践から紐解く、BtoBマーケティングの最適解」と題した連載シリーズでお届けします。
Micoworks株式会社とは
Micoworks株式会社は、SNSマーケティング支援を行う企業です。現在はLINEを活用したコミュニケーションプラットフォーム「MicoCloud(ミコクラウド)」を開発、提供しています。最適なSNSコミュニケーションによって、ブランド価値を最大化し、あらゆるビジネスの可能性を広げるツールです。
B2Bマーケティングに携わった経験のある方であれば、「The Model」は聞いたことがあると思います。私は「The Model」の著者である福田さんが在籍されていたMarketoでコンサルタントしていたこともあり、「The Model」は本当に身近な存在でした。
そんな私が、B2Bマーケティング、特にエンタープライズにフォーカスしたマーケティングをする際に、「The Model」で直面した課題と、それを乗り越えるために取り入れた「PODs」という組織体制を紹介します。
「The Model」で対応できないビジネスモデル
「The Model」の普及に伴い、業績の向上や、マーケティングチームの貢献が可視化され評価が向上したマーケターが増えました。
しかしながら、チーム編成やKPI管理などのエッセンスを一部だけ導入しても期待通りの効果が得られず、様々な方々から助言を求められる機会も増えました。
あらゆるビジネスにおいて「The Model」のアプローチを採用すれば必ず業績が向上するとは限りません。なぜなら「The Model」は魔法の杖ではないからです。
たとえば私の前職である外資系AI企業では、特定業界の大手企業向けにサービスを提供しておりました。販売条件を絞り込んでいるため、日本国内で販売対象となる企業は片手で数えられるほどの数でした。そのような状況では、新たなリードを展示会で大量に獲得する必要はありませんし、インサイドセールスも不要でした。
また、SFAシステムも導入していましたが、顧客と営業の管理についてはExcelでも十分に管理可能な顧客数と商談数でしたので、MQLやSQLについても細かくチェックする必要はありませんでした。
このように、どのようなケースであっても「The Model」型の組織で上手くいくわけでないので、ビジネスモデルや、ターゲットに合わせて適切なレベニュー組織(売上創出に関わる全部門)を作り上げていく必要があるのです。
エンタープライズ企業にフォーカスするためには?
MicoworksのSales&MarketingにおいてもLINEを活用したマーケティングツール「MicoCloud」が大手BtoC企業に対して価値提供できることや、エンタープライズを得意とするセールス人材の採用に成功してきたので、今後はよりエンタープライズにフォーカスをすることにしました。
しかし、「大手企業×特定業界」へのアプローチをはじめるにあたり、特定セグメントに対する認知獲得や、刺さるメッセージングの作成、といった課題が浮かび上がってきました。
大手企業にフォーカスすると、当然ながらターゲット企業数は減少します。特定の業界に絞り込むと、ターゲットはさらに限られます。しかし、ターゲットが狭まる一方で、その特定領域での認知を高めたいと考えています。
この場合、業種や企業規模に関係なく広く認知を得るのは非効率です。そのため、ファネル型のアプローチではなく、エレベーター型のアプローチに転換する必要が生じました。
また、ターゲットが限られる場合、行動変容を促すには顧客の特性をより詳細に把握する必要があります。たとえば、高級自動車メーカーのBMWにアプローチする際、「製造業の皆様!これを試してみませんか?」といった広く一般的なメッセージではなく、「高級自動車の販売に関わっているxx様!〇〇という課題を解決しませんか?」というように、より具体的なアプローチが求められます。
PODsに出会うまで
「大手企業×特定業界」にアプローチする際に「The Model」では限界があると感じていたので、知り合いのマーケター10人程に相談して回りました。
すると、大手外資SaaS企業のマーケターから「うちはPODsで業界毎で攻めている」という話を聞くことができたのです。
ほかにも表現は違うものの、マーケ・IS・営業で「バディ体制」を組んでいたり、「業界特化チーム」と表現されていたりしたのですが、各社とも似たような取り組みを進めていました。
PODsの取り組みについて紹介
弊社では「大手企業×特定業界」に対してPODs組織を組んでおり、「マーケティング・SDR※1・BDR※2・セールス・CS」の5チームからそれぞれ1名が参加しています。また、MM(中規模ビジネス企業)・SMB(小規模ビジネス企業)においては「The Model」型のレベニュー組織で運営しております。
※1:インバウンド型インサイドセールス
※2:アウトバウンド型インサイドセールス
(まだ動き始めたばかりなので、受注後の情報をCSから拾い上げてマーケティングやセールスに活かすフェーズには来ておりません。)
マーケティングやSDR・BDRが特定業界にアプローチするために、チームを超えてリストを用意したり、リード獲得チャネルについて協議したりすることで、想定以上のパフォーマンスが出ています。
一方で、課題を感じているのは人的リソースです。多くのスタートアップ企業は、知名度があるわけではないですし、潤沢な候補者のプールがあるわけでもなく、採用について悩んでいるケースがほとんどだと思います。私の理想としてはすべてのターゲット業界ごとにPODsを組成したいのですが、人的リソースの問題で難しいのが現状です。
1人が複数のPODsを掛け持ちすることも考えたのですが、それでは業界知識やノウハウの吸収に限界が来ます。PODsでやる意味が薄れてしまうので、掛け持ちも難しいと判断しました。
このように人的リソースが潤沢にないとPODs体制を組むのはなかなか難しい面もありますが、今のところテスト的に実施していますが、かなり効果的な組織運営方法だと感じています。弊社は今後も業界特化でPODsを組成して成長していきたいと考えておりますが、何せ人が足りないので少しでも興味ある方は是非ともご応募いただけますと幸いです(笑)
本記事ではPODsに取り組んだ背景と途中経過を紹介させていただきました。どこかのタイミングでまたPODs体制の成果についても紹介させていただければ幸いです。
執筆者プロフィール
大里紀雄(おおさとのりお)
Micoworks株式会社 ビジネスマーケティング部 Director
大手Web制作会社にてチーフデータアナリストとして、DMPの構築および活用支援、広告運用の業務に従事。マルケトではシニアビジネスコンサルタントとして業種業界を問わず、大手企業から中小企業まで、MAツールの導入や戦略構築支援を行う。 その後、複数の事業会社で大規模カンファレンスの企画運営や、オウンドメディアの構築などのマネジメント、アジアパシフィック地域のマーケティング戦略立案や広報活動など幅広い業務を経験し、現在に至る。