「検索順位は落ちていないのに、サイトへの流入が減っている」。
そうした違和感や悩みを抱える企業が増えています。その原因のひとつが、AI検索の普及による、ユーザーの検索行動の変化です。第一回で解説した「AIO(AI Optimization/AI最適化)」が重要になる背景にも、この変化があります。
ユーザーはAI検索によって、どのように情報を集めるようになったのか。どのような検索クエリが影響を受けるのか。そして、企業はなぜこれまでSEOへ投資してきたのか。
今回は、この3つの視点から、AI時代にSEOやコンテンツマーケティングを考えるうえで押さえておきたいポイントを解説します。
目次
これまでのGoogle検索では、検索結果にWebサイトへのリンクが並び、ユーザーが複数のサイトを行き来しながら情報収集を行うのが一般的でした。
しかし近年は、Googleの検索結果の上部に「AIによる概要(AI Overviews/例下図①)」が表示されるようになり、Webサイトをクリックせずにその場で解決・離脱する「ゼロクリック検索」が増加しています。
世界的なSEO・AI検索分析ツールを提供するAhrefs社の調査によると、検索結果にAI Overviewsが表示された場合、検索1位に表示されたページのクリック率(CTR)が58%減少したと報告されています。従来の「検索結果で1位を取ればアクセスが集まる」という前提は、根本から揺らぎつつあり、検索結果からWebサイトへ流入するユーザーは、今後さらに減少する可能性があります。(出典:https://ahrefs.com/blog/ai-overviews-reduce-clicks-update/)

さらに、Google検索の代わりに、ChatGPTやGemini、Perplexityといった「生成AI」そのものを情報収集の入口として利用するユーザーも急速に増えています。
実際、オプトがデジタルマーケティング担当者約2,500名を対象にした「企業のLLMO対策に関する調査」の結果では、生成AIの利用率は2025年3月から11月にかけて、プライベート・ビジネス利用ともに約3倍まで増加しており、AI検索は一部のユーザーだけのものではなく、一般的な行動へと定着し始めています。

では、どのような検索がAI Overviewsの影響を受けやすいのでしょうか。
影響の大きさは、検索の目的によって変わります。検索クエリは、ユーザーの目的に応じて大きく3種類のタイプに分けられます。
| 検索タイプ | 検索の目的 | 検索例 | AI検索の影響 |
| 情報型クエリ | 意味や定義、概要を知りたい | 「マーケティングとは」「SEOとは」 | 大きい |
| 取引型クエリ | 商品・サービスを比較・購入したい | 「エアフォース1 白」「iPhone 16 購入」 | 比較的小さい |
| 案内型クエリ | 特定のサービスやページへ行きたい | 「Facebook ログイン」「Amazon マイページ」 | 小さい |
この3つのなかで、AI Overviewsの影響を最も大きく受けているのが「情報型クエリ」です。
理由はシンプルで、情報型クエリはAI Overviewsの回答だけで完結しやすいからです。
たとえば、「マーケティングとは?」と検索した場合、AI Overviewsは複数のWebサイトから情報を集め、「マーケティングとは○○です」と概要を整理して回答します。ユーザーはその回答を読むだけで疑問が解決するため、個別のWebサイトをクリックせずに検索を終了してしまうケースが増えています。
一方、取引型クエリや案内型クエリは、情報型クエリほどAI Overviewsの影響を受けません。その理由は、取引型クエリや案内型クエリではAI Overviews自体が表示されにくいうえ、表示されたとしても、ユーザーは最終的にWebサイトへ移動する必要があるためです。
たとえば、「エアフォース1 白」と検索するユーザーは、商品の画像や価格、在庫状況、購入先などを比較しながら、自分に合った商品を選びたいと考えています。そのため、AIの概要だけで検索を終えることは少なく、ECサイトや比較サイトなどを訪れて、より詳しい情報を確認する行動が多くなります。また、「Facebook ログイン」と検索するユーザーは、ログインページへアクセスすること自体が目的であり、最終的にWebサイトを訪れる必要があります。
ただし、情報型クエリでWebサイトが見られなくなるわけではありません。AI Overviewsの要約だけでは完結しない検索テーマやシーンもあります。
たとえば、以下のような検索です。
これらの検索に共通するのは、正解が一つではないという点です。
「書類選考 通過率」であれば、新卒なのか中途採用なのか、業界や企業規模によっても結果は大きく異なります。「女性管理職 不満」であれば、現場のリーダーなのか、部長なのか、役員なのかによって課題も変わります。「証明写真 コツ」であれば、文章だけではなく、実際の写真を見ながら確認したい人も多いでしょう。
このように「具体的な実例」「リアルな体験談」「画像や図解による視覚情報」などが必要なテーマの場合、AIの回答だけでは十分な情報が得られません。そのため、ユーザーはAIの概要を見たあとも、記事を読んだり、画像を見たり、複数の情報を比較したりしながら情報収集を続けるのではないでしょうか。
だからこそ、AI時代のコンテンツマーケティングでは「AIに要約されて終わる一般的な解説」を用意するのではなく、「どんな文脈や一次情報があれば、ユーザーはAIの先にある自社記事まで足を運んでくれるのか」を見極めながら戦略を考える必要があります。
AI検索時代のSEOを考えるうえで、まず知っておきたいのが、企業がこれまで情報型コンテンツへ投資してきた理由です。
最大の目的は、早い段階で見込み顧客と接点をつくることでした。
分かりやすい例が、2010年代前半に大きな成功を収めた「転職口コミメディア」の事例です。
当時の転職市場は、大手求人ポータルサイトが圧倒的なシェアを握っており、「営業 転職」「都内 転職」といったキーワードで後発企業が競争するのは容易ではありませんでした。
そこでそのメディアが狙ったのは、転職活動を始める前の情報収集段階にいるユーザーでした。
転職を考え始めた人は、いきなり求人サイトを訪れるのではなく、「企業名 年収」「企業名 口コミ」といったキーワードで企業について調べます。その検索ニーズに応えるコンテンツを提供することで、転職を検討し始めたユーザーと早い段階で接点をつくり、自社サービスの成長につなげました。
この事例が知られるようになると、「○○とは」「○○のやり方」「○○のメリット」といった情報型コンテンツを制作する企業が増えていきました。
情報型コンテンツは、見込み顧客と早い段階で接点をつくれるだけでなく、一度制作すれば、継続的な検索流入が期待できます。だからこそ、多くの企業がSEOを重要なマーケティング施策として位置付け、継続的に投資してきたのです。
これまでのSEOマーケティングは、「情報型クエリでユーザーを集め、記事を通じて認知を高め、サービスを知ってもらったうえで、問い合わせや購入につなげる」という導線を前提に設計されてきました。
しかし、AI検索の普及によって、「ユーザーは記事を読まなくても疑問を解決する」ことが当たり前になりつつあります。
もちろん、SEOが不要になるわけではありません。しかし、検索流入だけに依存した集客モデルでは、これまでと同じ成果を出し続けることは難しくなるでしょう。
では、顧客の検索行動が大きく変化するなかで、企業はどのように戦略を見直せばよいのでしょうか。
次回は、AI検索の影響をダイレクトに受けやすいメディア企業を中心に、AI時代でも成果を出し続けるための3つの戦略を解説します。