
【オプト x ポーラ】SNS利用時のユーザーインサイトを捉え、ターゲットの熱量を引き出す。売上計画比185%を記録した、ポーラ「B.A 3D コンシーラー」のSNSマーケティング
2025.05.15
2025.05.15


株式会社オプト
今回のsyncAD(シンクアド)インタビューは、ポーラの高価格帯ブランドB.Aから、2023年8月に発売された「B.A 3D コンシーラー」。発売前からのSNSを駆使したマーケティング戦略が功を奏し、売上計画比185%という数字に加え、23年下期のポーラ全新製品のなかで最高の売上を記録しました。近年キャンペーンに著名人をあまり起用してこなかった同社が今回起用したのは、元宝塚歌劇団のスター。宝塚ファンをターゲットに絞るという大胆なSNS戦略はどのような狙いから生まれ、どのように遂行されたのか。株式会社ポーラ顧客戦略部の山﨑あかね氏と、株式会社オプトプランニング統括室の中村駿介氏に伺います。
目次
低価格帯化粧品が注目される中、「B.A 3D コンシーラー」に求められたもう一つのミッション
―高価格帯化粧品ブランドにおける市場動向を教えてください。
山﨑氏:アフターコロナへの転換に伴い化粧品市場全体が拡大したことによって、化粧品やケアに求める機能や価値、価格帯なども多様化していると感じます。高価格帯品の動向をみると、最近は「美容成分を含んだベースメーク品」が増えています。
初めから高価格帯のスキンケア商品を手に取ることはハードルが高いと感じる方でも、ベースメークであれば高価格帯を試してみやすいという声があります。まずはベースメークを試していただいて、そのブランドを好きになっていただく。高価格帯ブランドにとって、ベースメークはブランドを好きになっていただくきっかけになりつつあると思っています。
―「B.A 3D コンシーラー」発売前の課題や狙いはどのようなものでしたか?
山﨑氏:B.Aの主なお客さまは、既存のポーラ製品のファンが多かったので、ファンの皆さまは引き続き大切にしながら、新しいお客さまにも興味を持っていただくかが課題でした。税込6,930円という価格も新しいファンを意識しての設定です。これまで弊社はスキンケア品におけるプロモーションは必ず実施していましたが、ベースメーク品にはそこまでのリソースを割けずに、あまり注力してこなかった経緯があります。
オプトには2023年の春に初めてプロモーションをお願いしたのがきっかけで、そこからベースメーク品のプロモーションの型をつくりたい狙いがあったので、8月に発売された「B.A 3D コンシーラー」でも引き続きご依頼をしていました。
―オプトはどのようなプロモーションを実施したのでしょうか?
中村氏:SNSというプラットフォームをどう効果的に活用するか、という観点で企画を考案しました。いただいた予算のなかでマーケティング成果を最大限に出すために、特に、ターゲット選定はとてもこだわっています。今回私たちが注目したのは「宝塚ファン」の存在です。
宝塚ファンの方々はいわゆる「推し」に対する熱量が高く、「推しが使っているメーク用品なら自分も使ってみたい」と、購買に対する前向きな姿勢をお持ちです。自分の趣味には惜しみなく投資する方々でもあるので、その熱量を火種に、いかに拡散して「B.A 3D コンシーラー」の魅力を世の中に広げていくか、ということを意識しました。
コンシーラーの特徴を訴求する「目元当てクイズ」から
―宝塚ファンに狙いを定めることについて、山﨑さんはどのような印象を持たれましたか?
山﨑氏:ポーラは近年著名人をPRに起用してこなかった点と、私があまり宝塚に詳しくはなかった点から多少の不安はありました。しかし、社内の宝塚好きの社員数名に意見を求めたところ、反応が非常に良く、彼女たちのレコメンドもあり、元宝塚歌劇団の美弥るりかさんを起用したキャンペーンを実施しました。
また、オプトの方には宝塚の方を起用することによる波及の大きさを丁寧に分析していただきました。宝塚が好きというだけでなく、宝塚のようなきれいな空間へ、おしゃれをして鑑賞に行くことが好きな方がどれほどいるのか、美容好きと宝塚ファンとの相関性が分かったことで、キャンペーンの波及効果などにも期待が持てました。

―そこから、具体的にどのような施策を実行したのでしょうか?
中村氏:まずは美弥さんの目元だけを切り取ったクリエイティブを公開して、ユーザーにキャストを予想してもらうキャンペーンを実施しました。ファンの方に「これって○○さんじゃない?」とSNS上で議論していただくことで盛り上がりの火種を生み、製品の販売告知のタイミングで美弥さんの名前を公表して最初の山場をつくるという二段構えの戦略を取っています。
次は商品の購入につながるきっかけとして、1,500名の方を対象にサンプルプレゼントを実施しました。Xのポーラ公式アカウントをフォローしていただき、該当の投稿をリポストいただいた方に抽選でサンプルを配布することで、商品の特徴理解を促しながらさらなるリーチの拡大を狙いました。
山﨑氏:「B.A 3D コンシーラー」は目元に悩みがある人をターゲットにしているので、目元だけに絞ったクリエイティブはユーザー間の予想を盛り上げるだけでなく、商品自体の魅力も伝えやすかったと考えています。発売後のサンプルプレゼントでは、端的に商品の特徴が伝わる「#大人の光カバー体験キャンペーン」というハッシュタグを用意したので、上手く話題性が高まり、ファンの間だけでなく、美容関心のある方の間で広まっていきました。
中村氏:続いて美弥さんのオフショットインタビューの様子を公開しました。広告的にみせるのではなく、美弥さんのオフの姿が垣間見えるようなインタビュー内容で、商品の感想やアイメークのこだわりやコツを伺い、併せてオフショットを投稿しました。これはファンの方から「待ってました!」というような声もあり、さらにファンの方の盛り上がりをつくるきっかけになったと思っています。
ラストの施策として一般の方からモニターを募集して実際の商品を使ってもらい、使用感や感想を発信していただきました。美弥さんに加えて一般消費者の方が情報発信をすることで、より商品への信頼感や安心感を消費者の方に届けたいと思いました。
宝塚と高価格帯コスメの親和性
―「B.A 3D コンシーラー」は売上計画比185パーセントを記録したとのことですが、担当者としての実感を教えてください。
山﨑氏:まず私の肌感覚として、非常によく売れているな、という実感がありました。発売初日にECで欠品になってしまったのですが、これまでベースメーク品で発売初日に欠品が出たことがなかったので、その時点で社内がざわつきましたね。8月の発売から12月いっぱいまでは在庫が安定せず、どこかの店舗に入荷したらすぐに売れてしまうという状況が続きました。
売上計画比の185%という記録に加えて、2023年の下期に発売された全新製品の中で最も売れたのが「B.A 3D コンシーラー」です。ただ、冒頭でお話ししたとおり、今は低価格帯の化粧品でも良いものはたくさんありますので、約7,000円の「B.A 3D コンシーラー」がここまで爆発的にヒットする絵は、社内でも見えていませんでした。
―今回のキャンペーンの成功要因はどこにあると考えていますか?
中村氏:大前提、商品の力があり、その力をどう引き出すかが私たちの仕事だと思っています。そのうえで、キャンペーンの成功要因は、ターゲット選定が「商品特性」と「SNS活用」の双方にフィットしたことだと考えています。宝塚ファンの皆さまが持つ熱量を、上手くキャンペーンの盛り上がりに転化できたという手応えがあります。推しが使っているものであれば、高価格帯であっても手にとってみたい、というベースのマインドがあり、ターゲット層の嗜好性と「B.A 3D コンシーラー」という商品とターゲット層が上手くマッチングしたことが成功要因かと思います。

山﨑氏:宝塚ファンの方は普段から観劇に出かけるし、推しに会えるイベントがあれば洋服を新調したり、メークアップしたりと自分への投資を惜しみません。そういった消費を楽しまれてる方にターゲットを絞った点が大きいと考えています。
中村氏:もう一つはポーラさんがオプトの案にGOサインを出してくださったことです。近年はあまり著名人を起用されてこなかったにも関わらず、元宝塚の美弥るりかさんを起用するアイデアを受け入れていただけたのは、大きな決断だったはずです。
SNSごとの特徴を捉え、訴求軸を変えることの重要性
―今後、オプトに期待することを教えてください。
山﨑氏:オプトと仕事をご一緒して面白いと感じるのは、こちらからの依頼に対して「守りの案」と「攻めの案」を出していただけることです。今回はまさに攻めの案を選んだわけですが、私はそのアイデアを毎回楽しみにしています。もちろん予算の都合などで攻めの案を選べないときもありますが、私にとって新しい視点を得る学びにもなっているので、ぜひこれからも攻めた案をいただければと思います。複数のアイデア出しを続けていくと、似たり寄ったりになりがちな中、企画に攻めた要素を持たせることはとても重要だと思います。
―これからの2社の取り組みについて、今後の展望を教えてください。
中村氏:オプトとしては単に「攻めたアイデア」を出すのではなくて、いかにしてそこに再現性を持たせるかを研究しています。SNSはかなり生もので、その時のユーザーの状態を的確にとらえることが重要であると考えています。SNS上でキャンペーンを実施するときは、ユーザーが「どのようなモード(欲求)にいるのか?」を捉えられるかで成否が分かれます。
同じ人間でも、その時々でSNSを見ているときのモードは変わってきます。なんとなく見ているときもあれば、情報収集のために見ているときもあるし、自分から何か情報やコメントを発信したいというモチベーションで見ているときもあります。今回のキャンペーンではユーザーが広告を見たときに、どのようなモードであれば反応してくれるのかを意識しました。例えば、今回でいうとユーザーの『議論欲求』を捉えて、あえて議論が行われるような仕掛けを施しました。ユーザーのモードを捉えることは難しいですが、そこに無意識だとせっかくキャンペーンを知っていただいてもモチベーションと噛み合わずにスルーされてしまう可能性があります。
山﨑氏:確かにSNSによって使っている時のモードが異なるような気がします。時間で切り替わるというよりは、投稿の内容や流れてくるものによって無意識に切り替わっているなと感じます。モードに関しても、とても丁寧に説明くださり、私にも実体験があったため、オプトから提案を受けたときに、とても納得してキャンペーンを開始することができました。
そして実際に、私が趣味でもっているアカウントに、今回の宝塚のキャンペーンが流れてきて、モードを捉えたキャンペーンを行うことによる拡散性の高さを感じ、SNSのモードを捉えて発信することが大切だと実感しました。
中村氏:そうですね。SNS利用時のユーザーのモードを捉えて、再現性のあるキャンペーンを実施していく。私たちはこれを『Dual Insights Model®』というプランニングモデルとして確立しています。このモデルを駆使して、ブランド様のSNSマーケティングに貢献することが命題です。

