動画配信プラットフォームの世界的大手 ブライトコーブ 発表会から読み解く動画市場の最新トレンド
2021.05.18
2022.04.25
ブライトコーブ株式会社
動画配信プラットフォームを提供するブライトコーブは、3月16日にメディア向けの戦略発表会をオンラインで開催しました。ブライトコーブは、世界70ヵ国以上で事業を展開し、約3,330の顧客を抱える米・Brightcoveの日本法人。世界13ヵ国に拠点を持つBrightcoveは、約600人の従業員とともに、年々事業を成長させています。
同イベントでは、世界および日本での動画市場の最新トレンドや動画の活用事例について話をしました。本記事では、その模様をお届けします。
コロナ禍で動画市場は世界的に成長
まず初めに、Brightcove Inc. CEO ジェフ・レイは、「動画には、今までになかったほど強力な力がある」と話をしました。
かつての動画業界は、放送局が配信コンテンツを選び、テレビの前にいる視聴者がそのコンテンツを受け取るという構図になっていました。しかし、インターネットによる動画配信が進んだ現在では、どんなコンテンツを、どこで、いつ、どのデバイスによって視聴するかは、視聴者が選べるようになりました。動画は、時間や空間というバリアを打ち破ったと言えます。
また、「動画は物語を伝えることのできる唯一無二の伝達手段」でもあるとジェフ・レイは語ります。
例えば、自動車メーカーのFordは、自社のウェブサイト上で、動画コンテンツを展開していました。コンシューマーに対しては「Fordの自動車に乗りたい」という感情を想起させるコンテンツを楽しんでもらいながら、同時にインターナルコミュニケーションの手段としても動画を活用。社内10万人の従業員とのコミュニケーションに成功しました。
また、日本マクドナルドでは、クルーのトレーニングマニュアルやコーポレート・コミュニケーションで動画を活用。当時、フランチャイズを含めて数万人いたクルーの足並みが揃わずにいた状況が、動画を使うことで点と点をつないだコミュニケーションを行なうことができました。加えて、動画では日本マクドナルド独自の音楽やダンスの投稿を社員に呼びかけ、社内エンゲージメントの醸成にも成功しています。つまり、動画には情報だけではなく物語を乗せることで、さまざまなポジティブな結果を生み出すことができる可能性が秘められているのです。
コロナ禍によって、動画の視聴時間は全世界で急激に増加しました。ジェフ・レイは「この成長は、新型コロナウイルスが終息してからも進んでいく」と述べ、アフターコロナにおいてもコロナ以前に戻ることはなく、リアルとオンラインというハイブリッドという形で動画市場の成長が続くと見ています。
在宅勤務が増えたことで、視聴デバイスでは「コネクテッドTV」の需要が増加
続いて、ブライトコーブ代表取締役社長 兼 本社 Senior Vice President 川延 浩彰が、Global Video Index を読み解きながら、日本の動画業界の動向について解説しました。
ニュース・スポーツ・リテール(小売・EC)の全てのカテゴリーにおいて、前年比で大幅な成長が見られました。特に大きな伸びを見せているリテールカテゴリでは、人々の購買活動がオフラインからオンラインへと急速にシフトし、オンラインの購買活動における動画の重要性が顕著に表れる結果となりました。
続いては、特に新型コロナの影響が大きかったと見られる2020年4月~6月の動画尺別視聴デバイスシェアについて。
どの動画尺においても、スマートフォンが多くのシェアを獲得しているものの、注目は動画尺が長くなるにつれてシェアが増加するコネクテッドTV。
「コネクテッドTVとは、スマートTV、FireTVやAppleTVなど、近年増加しているインターネットに接続したTVデバイスのこと。テレビなど大きな画角で視聴するコンテンツは比較的長尺コンテンツになる傾向があります」(川延)
動画視聴デバイスとしてのコネクテッドTVの需要は、「動画視聴数前年比増加率」のグラフにも表れています。
「コネクテッドTVは、通常リビングに設置されるデバイス。コロナ禍によって在宅の時間が長くなり、家のリビングでコンテンツを楽しむ機会が増え、コネクテッドTVを視聴する機会が前年と比べて圧倒的に増えたということが、データに面白く出ています」(川延)
川延は、これからもシェアが高まってくると予想されるコネクテッドTVについて、「今後、動画戦略を練る上で重要な位置づけになる」と捉えます。
続いて、コネクテッドTVを語る上で「OTTというキーワードが重要になってきます」と述べます。OTTとは、「Over The Topの頭文字を取ったもので、コンテンツをユーザーに届ける手法として一般的であった電波放送、衛星放送、ケーブル放送などをバイパスとして、インターネットを経由してコンテンツを配信すること」と説明しました。
OTTの重要性は、スマートフォン、タブレット、PC、コネクテッドTVとさまざまなデバイスをまたいで、いつ、どんなデバイスからでもアクセスでき、動画の続きをシームレスに見ることができることにあります。外出先でスマートフォンを片手に見ていた動画の続きを、自宅に帰宅後にソファに座りながら大画面のコネクテッドTVで見ることができるのです。
ブライトコーブのプラットフォームを活用してOTTサービスに取り組んでいる事例として、メディアOTTの領域から、民放公式テレビポータルのTVer、ヤフーの無料動画サービスGYAO、定額制動画配信サービスParaviを紹介しました。また、日本経済新聞社や朝日新聞社などの大手新聞社にも採用されており、即時性が求められるニュースコンテンツの配信に使用されています。
続いて、スポーツブル(運動通信社) が夏のインターハイの動画配信をサポートした事例として、ある1日の特定の時間に実施されている100試合以上をすべて並行でライブ配信した実績も紹介されました。
その他、企業の動画活用事例として、大きく2つのカテゴリに分けて紹介しました。1つはコーポレートコミュニケーション、もう1つがセールス&マーケティングにおける動画活用です。
そのなかでコーポレートコミュニケーションにおける動画活用の事例として、資生堂の社内向けウェブサイト「WITH」を紹介しました。直近での「WITH」の取り組みで最も反響があった動画コンテンツは、資生堂の手指消毒液に関する取り組みだったそうです。新型コロナウイルス感染拡大の抑制に対して、資生堂ができるあらゆる可能性を考えて、即座に実行したい、というトップの想いを発表してから医療現場や自治体に届けるまでの過程を、担当者の努力や工場の様子なども含めて配信しました。その結果、これまでにないくらい社内から反響があったそうで、社会的に意義のある活動を社員にきちんと伝達することが、社員からも求められていることがわかったそうです。
また、セールス&マーケティングにおける動画活用事例として、Sansanの取り組みを紹介しました。Sansanでは、「Sansan活用ナビ」というオウンドメディアを通して、サービスの理解を促進し、顧客の満足度を高める取り組みをしています。そのなかで、視聴データをマーケティングオートメーション(MA)ツールに自動的に取り込むことで、webやメールのログでも測れない顧客との距離を可視化する指標を得ることができるようになったそうです。Sansan以外でも、動画視聴データをマーケティングオートメーションツールと連動してより詳細な顧客データを取得している企業は数多くあることにも言及しました。
このようにOTTはさまざまな分野で活用され、社会に浸透しつつあります。そうしたなかで、コネクテッドTVと同様に今後、動画戦略を考える上で重要な位置づけになると話しました。
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