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Adjust 日本ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏に聞く、ポストIDFAにおけるハイパーカジュアルゲームの ユーザー獲得と収益化

時計2021.08.06

更新2022.04.29

Adjust ゼネラルマネージャー 佐々 直紀氏インタビューポストIDFAにおけるハイパーカジュアルゲームの ユーザー獲得と収益化

adjust株式会社

Adjustは、モバイルマーケティング分析プラットフォームです。アプリの持続的な成長を目指す世界中のマーケターから信頼されており、広告キャンペーンの効果測定と最適化、ユーザーデータを保護するソリューションを提供しています。

Web広告・マーケティングのいまをお届けするsyncAD(シンクアド)インタビュー第16弾は、前回に続きAdjustの日本ゼネラルマネージャーとして、日本オフィスを統括する佐々直紀氏に「ポストIDFAにおけるハイパーカジュアルゲームの ユーザー獲得と収益化」についてお話を伺いました。

Appleが施⾏したiOS 14.5における新プライバシールールを受けて、ゲームアプリのエコシステ ムが揺れ動いています。モバイル事業をこの変更点に対応させるのは複雑なテーマであると同時に、今後のiOS向けゲームビジネスのあり⽅にも⼤きく影響します。変更の施⾏時期については⻑い間不明なままでしたが、新しいルールがアプリエコシステムに与える長期的な影響が、今後より明確になるでしょう。

この1年間、私たちは多くの広告主やアドネットワークの皆様と、これらの新ルールがどんな影 響を与えるかを協議してきました。それらの話の中で明らかだったのは、広告マーケティングは、iOS 14.5以降も引き続き重要であるという点です。
しかし同時に、私たちは、確定的なデータの減少により、広告効果が低下する可能性があると いう結論に⾄りました。これを念頭に置きながら、本稿では、ゲームアプリ戦略においてiOS 14.5の影響を最低限に抑えるための⽅法を紹介します。

データ主導の意思決定

ハイパーカジュアルゲームのようなデータ主導のアプローチがとられるアプリのマーケターは、どのチャネルに予算を投⼊し、どのようにキャンペーンパフォーマンスを最適化すべきかをよく把握しています。なぜなら、ユーザー獲得が正確なキャンペーンデータに基づいて⾏われているためです。最もパフォーマンスの⾼いキャンペーンを特定するため、マーケターは0⽇⽬/1⽇⽬の継続率やユーザーのLTV、またはROASなどの特定のKPIを使⽤しています。

また、ゲームアプリのマーケターは、⾮常に⼩さいROIのマージンでキャンペーンを運⽤するため、指標はすべて具体的なデータを必要とします。どこに投資するか、そしてどこでスケールダウンをするかを知ることで、指標を数パーセント引き上げることができるのです。

ここ数年のモバイルマーケティングの進化に逆らうようですが、確定的データが減少する中で、新規ユーザー獲得のために焦点を当てるべきチャネルを明らかにするには、再び推測を基に判断することが必要になります。しかし、広告マーケティングは、今後もモバイルエコシステムの⼀部として存在し、計測とパフォーマンスマーケティングの役割も、これまで以上に重要視されると考えられます。アプリの成⻑をサポートするための⽅法も、わずかに変化しています。頼りにできる確定的データが少なくなるため、マーケターは、モデルとコンテキストにより依存することになるのです。
「メディア ミックス モデル」で注意するべき点は、モバイル市場での成⻑には限りがあるということです。このモデルは、インプットの変化(チャネルごとの費⽤など)の相関関係と、それらがアウトプット(通常はインストール)に与える影響を明らかにします。しかし、複数のチャネルを横断するコストには、⼤きな相関関係があります。通常、Facebookに多くの広告費をかけているアプリは、Googleなどの⼤規模なネットワークにも多くの広告費をかけていることが多くあります。つまり、データの中には探るべきシグナルがわずかしかなく、このモデルを脆く不安定なものにしてしまいます。また、オーガニックインストールを考慮する⽅法もありません。そのようなことから、データを「無相関化」するために、追加の⼿順を踏むことが必要になります。
ポストiOS 14.5のデータ戦略を構築する際に検討するべきモデルは、以下のとおりです。

  • 相対的なチャネルの重要性(Relative Channel Importance)
    ⼀般的に、広告により多くの費⽤を投⼊すればするほど、インストール数は多くなります。しかし、最も多くのインストール数を創出しているのはどのチャネルでしょうか?RCIはデータ内の差異を確認して、収益指標(インストール数など)の各マーケティングチャネルが与える影響を間接的にマッピングします。これはメディア ミックス モデルに似ていますが、モデルをより堅牢なものにするための「無相関化」のステップが追加されています。
  • 外挿法による補正(Extrapolation)
    アトリビューションシェアが類似している複数のネットワークを横断してデータを⽐較し、インストールの合計数を推測します。
  • 予測型モデル
    機械学習アルゴリズムを活⽤することで、複数のネットワークを横断するデバイスなどの特定のデータ分散とパターンを使⽤して、確率的な⽅法でインストールに関連付けることができます。
  • ⾏動分類
    機械学習アルゴリズムを配置して、さまざまなネットワークのユーザーイベントのパターンを⾒つけることで、アトリビュートされなかったインストールを分類します。

メリットを活⽤する

確定的データの活⽤は、業務をできる限り現状に近づけ、ユーザーの同意率を⾼め、競争優位性を確保するための⽅法のひとつです。このデータが、推測モデルの正確性を⾼め、コホートの分析データを維持することができるのです。
IDFAを⾃動的に取得できなくなると、1,000回表⽰あたりの広告費(CPM)が⼤きな影響を受けます。デバイスIDが取得できないことで確定的なリンクが消失するため、DSP/アドネットワークは、今後ユーザーが優良な課金ユーザーかどうかを区別するには、複数のパラメーター(使用時間帯や基本的なデバイス情報など)を考慮して、確率的に判断することが必要になります。確定的なデータがないためリスクが⼤きくなり、この不確実性が広告費の価格に反映されることになります。

その⼀⽅で、引き続きIDFAを使⽤するインベントリーの価格は上昇する可能性があり、業界の多くのプレイヤーが、この既知の在庫を⾼額で⼊⼿しようと競い合うようになるでしょう。

また、⾼いオプトイン率を得るための戦略には、さまざまなものがあります。
AppTrackingTransparency(ATT)ルールの導入後は、CPMとアプリ内広告収益の見込みに影響が出てきています。よって、収益を広告に頼っている開発者は、⾼いオプトイン率を得るために、プロンプト戦略のPDCAを迅速に繰り返す必要があります。

迅速に対応する

iOS 14.5では、トラッキングにオプトインしないユーザーには、ターゲティング広告が配信されません。つまり、パブリッシャーにとっては、広告あたりの収益が減少することになります。⼀部のパブリッシャーは、オプトアウトするとより多くの広告が配信されるということをユーザーに知らせて、質の⾯で失った収益の損失分を量で補おうとします。

2020年にAdjustが実施した調査では、ハイパーカジュアルゲームが1分あたりに表⽰する広告の数がゲームプレイよりも多いにもかかわらず、収益を上げていることが分かりました。しかし、広告の表⽰が増えるにつれて、リターンは減少します。同調査では、1分あたり4広告以上を表⽰するハイパーカジュアルゲームでは、1ヶ⽉あたり約35,000ドルの収益が上限であることが明らかになりました。

最適値は1分あたりの広告数が2〜3と考えられ、的確に設定すれば、ハイパーカジュアルゲームは最⼤10%増の収益を実現できます。この結果は、iOS 14.5の広告収益化戦略を決定するにあたり、慎重にバランスをとる必要があることを⽰しています。パブリッシャーは、収益の損失を埋めるためにより多くの広告を表⽰する必要がありますが、広告が多すぎてユーザーが離脱することは避けなければなりません。

また、どのような種類の広告を表⽰するかも、検討するべきポイントです。インベントリーのオークションでは、ユーザーに関連性のある広告と、最も⾼い投資利益率をもたらす広告のバランスをとることで成り⽴っています。ネットワークは、多くの場合、いくつのインプレッションが1回のインストールまたは1,000回表⽰あたりのインストール数(IPM)につながったかを確認し、エンゲージメントやエンゲージメントの品質などの定性的指標を活⽤して、広告の価格を検討しています。
たとえば、ソーシャルプラットフォームは、これらの定性的指標に対する最適化を積極的にしています。クリエイティブに多くの「いいね!」やコメントがつくと、ソーシャルプラットフォームはこれを⾼く評価します。同様に、広告が⾮表⽰にされることが多いと、内部の指標によって評価が下げられます。これは、複数のネットワークにまたがる最適化戦略としてよく使われているものです。
ポストIDFAでは、何が変わるのでしょうか?ユーザーを正確に個別のクリックやインプレッションに紐付けることは難しくなりますが、今後は、どのような広告がより⾼いエンゲージメントを得ているかを把握することが重要です。よって、エンゲージメントが少ないバナーや⻑⽅形の広告インベントリーは、IDFAが取得できなくなったため、広告の価格は低下することでしょう。
その⼀⽅、動画やリワード広告、リッチメディアは、バナーや⻑⽅形広告と⽐較してよりユーザーの関⼼を引きつけることができます。よって、IDFAデータがなくてもパフォーマンスレベルを維持することができ、広告の価格も⼤きく低下することはないと考えられます。

ネットワークは、ユーザーがこうした種類の広告インベントリーを好んでエンゲージし、クリックすることを知っているため、広告の価値はそのまま維持されるでしょう。今までのように、ユーザーやオーディエンスを細かい粒度でターゲティングできなくなったとしても、このような広告が平均的なユーザーから好まれるという事実は、マーケティングの意思決定に役⽴ちます。

KPIを設定する

広告で収益化を⾏っているゲーム市場の場合、ハイパーカジュアルゲームのようにアプリ内収益を⽣成する機会を予測することで、マーケティングを成功させる鍵となる、健全なレベルのアクション単価(CPA)を算出することが可能です。iOS 14.5で、CPA(コンバージョン1件あたりの費⽤)のためにSKAdNetworkを最適化する場合、conversion value戦略を使⽤して「ad revenue」の条件を計測することをおすすめします。

SKAdNetworkは、24時間のタイマーとともに、インストール後の情報を表す6ビットで構成された情報を提供します。6ビットとは、0〜63の間の数字(またはバイナリーの000000〜 111111の間)です。この「conversion value(コンバージョン値)」には、バイナリーで表現可能なあらゆる値を割り当てることができます。Conversion valueがアプリ内で定義された6ビットのコードに更新されるたびに、タイマーの期間はさらに24時間延⻑されます。

このconversion value期間の有効期限が切れると、24時間のカウントダウンが開始されます。SKAdNetworkは、この24時間内にランダムにアトリビューションデータを返しますが、このランダムなタイマーを使⽤してインストールの時間を分かりにくくすることで、アプリ内のイベントの発⽕が個⼈ユーザーに紐付けされないようにしているのです。SKAdNetworkシステムは、このデータを集計した後に共有するため、粒度が細かいユーザーレベルのデータは取得できません。
SKAdNetworkを使⽤したマーケティングが成功するかどうかは、conversion value戦略をどう構築するかに左右されます。たとえば、ハイパーカジュアルゲームの広告主にとって重要なのは、範囲のカウントごとに広告インプレッションを計測することです。これをするために、広告閲覧数によってユーザーを分類する「バケット」を作成します。
たとえば、20〜30の広告インプレッション、または、1〜2⽶ドルの広告収益を⽣み出したユー ザーの数を計測したい場合、カウントあるいは値の範囲をサポートするconversion valueスキーマを定義できます。

バケットを使⽤した戦略では、20〜30の広告インプレッションを⽣み出したユーザーをconversion value 3に、または4〜5ドルの広告収益を⽣み出したユーザーをconversion value 5にマッピングする、などといったことが可能です。これにより、アプリ内のユーザージャーニーの最初の数時間でユーザーがどのようなパフォーマンスをしているかを詳細に把握しつつ、範囲を柔軟に定義することができます。
iOS 14の新しいプライバシールールは、アプリマーケターがAppleデバイスでマーケティングをする⽅法を⼤きく変化させます。しかし、適切な戦略をとることで、アプリを引き続き成⻑させるとともに、ポストIDFAの世界でも成功を収めることができます。

まとめにかえて

前回の「ハイパーカジュアルゲームをヒットさせる4つのヒント」と共に業界で注目されているiOS14.5の新プライバシールール。大きな変化で収益化に悩んでいるアプリマーケターは是非ご参考にしてください。

この度はご協力誠にありがとうございました。

Adjust 日本ゼネラルマネージャー 佐々直紀プロフィール

佐々 直紀(さっさ なおき)

Adjust 日本ゼネラルマネージャー 佐々 直紀(さっさ なおき)

■ドイツ発のモバイルアプリ計測プラットフォーム”Adjust”の日本ゼネラルマネージャーとして、日本オフィスを統括
■多くのスタートアップを立ち上げから軌道に乗せた経験を持つ
■アプリ広告の計測に関して深い知見を持つ第一人者

1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり、オンラインモールのキュリオシティ、Yahoo!ショッピング、ショッピングサーチビカム、リターゲティング・DMPのVizuryにてAE、AM、マーケティング業務を経験。2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入、2016年11月よりAdjustに参画。数々のスタートアップの立ち上げから軌道に乗せた経験を生かし、日本ゼネラルマネージャーとしてAdjustの日本オフィスを統括している。

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