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【Micoworks インタビュー】「顧客解像度」はなぜ重要なのか?マーケティングに活かすために押さえたいポイント

時計2023.04.25

更新2023.05.22

【Micoworks インタビュー】「顧客解像度」はなぜ重要なのか?マーケティングに活かすために押さえたいポイント

Micoworks株式会社

Micoworks株式会社は、SNSマーケティング支援を行う企業です。現在はLINEを活用した、コミュニケーションプラットフォーム「MicoCloud(ミコクラウド)」を開発、提供しています。最適なSNSコミュニケーションによって、ブランド価値を最大化し、あらゆるビジネスの可能性を広げます。

今回のsyncAD(シンクアド)インタビューは、Micoworks株式会社でビジネスマーケティング部 Directorを務めている大里 紀雄 氏にマーケティング業界でよく目にする「顧客解像度」がなぜ重要なのか。また、顧客理解は以前から必要とされているにもかかわらず、なぜ再び注目されるようになったのか。「顧客解像度」を高める必然性やマーケティング施策への活かし方、顧客を理解する際に陥りがちな注意点を中心にお話を伺いました。

マーケティングで顧客解像度が再び注目されている理由

ーここ最近、顧客解像度という言葉をマーケティング界隈でよく耳にしますが、どのような背景があると考えていらっしゃいますか?

大きく3つあると考えております。

まず、データ活用自体が目的化してしまっている点。デジタルマーケティングのツールやプラットフォームが増えたおかげで、マーケティングに使える各種データが増え、分析も比較的簡単になってきました。しかし、実際には取得できない様々なデータが存在しますし、本来マーケティングの実践にはデータ分析だけでなく、戦略はもちろんのこと、データから導かれたインサイトやアイデアも必要です。

2つ目に、顧客解像度が再び注目されている背景に、サービスやプロダクトの進化や競争環境の激化も大きいと考えています。競合よりもマーケットのペインを理解してプロダクトやサービスを作り込む必要があるので、顧客解像度の高さが勝敗を大きく左右します。

3つ目に、特にB2Bに言えることですが、購買に関わる関係者が増えていることも大事なポイントです。『隠れたキーマンを探せ!』という本の中で、購買に関わる人数が増えており、一般的なBtoB購買に関わる企業では平均5.4人いるといわれています。つまり、今までは決済者一人にご納得いただければよかったのが、現在では立場の違う5.4名にご納得していただいて、ようやくサービスを使っていただけるということです。そうなると導入担当者はもちろんそうですし、その裏に潜んでいる関係者の立場や考えもしっかり理解しないといけない。各関係者の立場に応じてそれぞれ異なった説明や価値提供が必要となるため、もっとお客様を多様な角度から理解しなければいけないという話が増えていくのは当然かと思います。

分業体制の弊害で、顧客の心理が見えづらくなっている

なるほど。1つ目の理由にデータの話がございましたが、様々なデータが容易に収集できるようになっても、顧客解像度を深めることは難しいのでしょうか?

それこそGoogle アナリティクスや、MAやSFAを含め様々なツールがあって、各ツールから取得できるデータもどんどん増えています。さらにIoTを活用すれば、膨大なデータも取れるようになります。

しかし、いくらデータを取得してもお客様の考えていることが分かるわけではないですし、お客様へ優れた提案ができるようにはなりません。

また、BtoBでSaaSのサービスを提供している企業では、THE MODEL(ザ・モデル)型の組織を安易に導入してしまい、分業体制とファネルごとのKPI管理だけを取り入れてしまった。こういった企業からよく相談をいただくのですが、全体を俯瞰する視点が欠けてしまったり、一気通貫で顧客の動きを把握できなくなっているようです。

※THE MODEL(ザ・モデル)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス。セールスフォース・ジャパンで活用されてきた営業プロセスモデル

昔は一人で営業して顧客管理して請求管理まで最初から最後まで行っていて本当に大変でした

そうですね。私も昔、営業し、提案して、そして受注してから実装&動作検証までを1人でしていた時期がありました。

これはこれで、様々な経験が積めるのでいいとは思うのですが、やはり非効率な面はあったと思います。その点、THE MODEL型だと分業されているので、効率的ですよね?

そうですね。一方で、先ほどお伝えしたように分業化されているとフィールドセールスの立場から、なぜ自社のサービスに興味を持ってくれたのかよく分からなくなってしまいがちです。なぜなら、マーケティングやインサイドセールスが課題をヒアリングし、意向を引き上げた状態で営業にお渡しするので、あたかも目の前に「買ってもいいよ」と検討している顧客が急に現れる、という感覚になってしまいがちです。

逆に、マーケターは「サービスやツールに興味があります」と手を挙げてくれた人をインサイドセールスに紹介だけして終わってしまうことも。その後「そのリードが受注したかどうかは追えていない」、「どんな課題を抱えていたかも分からない」、つまり顧客解像度が上がらないという悩みもよく耳にします。

これは、ファネルを分業し、マーケの業務をリード獲得だけに過度にフォーカスしてしまったことで、見込み顧客受け渡しが主目的になってしまうことで起こりがちな事象です。

顧客が購買に至るまでのメカニズムを追求

Micoworks 大里 紀雄 インタビュー

なるほどですね。では、分業化がスタンダードになりつつある中でどのように顧客解像度を高めていけばよいのでしょうか?やはりデータの分析でしょうか?

私よりも一回り、二回り若い世代の方はデジタルマーケティングから入ってくることが多く、手元に大量のデータがあるのが当然で、お客様のところへ直接行かなくても十分お客様を理解できていると思えてしまう気持ちは理解できます。

しかし、結局はお客様の真の課題を解決できる施策を打つためには、もっと深くお客様のことを理解しなければなりません。そのためには、データも大切ですが、データ分析だけでは不十分だと考えています。

一方で、解像度を上げるというと「とにかく直接顧客に会いに行けばいいんだ」と勘違いされがちです。

こうした手法よりも重要なポイントだと考えているのは「なぜお客様は興味を持ってくださって、なぜ買う意思決定してくれたのか?」このメカニズムや、お客様が口に出していない課題を追求し、諦めずに考え切ることだと思います。

データ分析や、フィールドワークといった手法よりも、諦めずに執念強く考え続けることが大事、ということですね。

そうですね。インドの寓話で「The Blind Man and the Elephant(群盲象を評す)」というものをご存じでしょうか?目の見えない人たちが象を触り、象のお尻を触った人は「壁のようだ」と言ったり、足を触った人は「これは木のようだ」、耳を触った人は「うちわのようだ」などと、口々に言い合います。

それぞれ言っていることはみんな不正解ではないのですが、いずれも象の一部だけしか捉えられていない。物事の一面だけを理解して、すべてを理解したと錯覚してしまうことのたとえとして使われます。

「顧客解像度」を高めるには、お客様に迫ることはもちろんですが、一歩引いて抽象化して捉えることもやはり必要だと思っています。個別に把握した顧客課題を、一段抽象度を高く見ていくと共通の課題がみえてくることもあるからです。こうした顧客解像度の抽象と具体のバランス感覚はすごく重要です。顧客の生の声と行動を拾うこと、データを活用して全体像を掴むことの両方を駆使して、顧客を3D映像のように立体的に捉えることが可能となります。

実体験から得た、顧客ビジネスへの気づき

Micoworks 大里 紀雄 インタビュー

大里さんが顧客解像度を高めるために実施した具体的な取り組みについて教えていただけますか?

車両管理システムを提供する会社に入社したばかりの頃の話ですが、顧客が中小企業の総務の方や運送業の社長など、これまで私が相対してきた顧客層とガラッと変わり、私の中で自社サービスのユーザー像がクリアにならなかったのです。もちろん、様々なデータを収集して分析も行いましたが、いまいちピンときておらず、記事を作るにしてもLPを作るにしても、「この人たちにはどういう言い回しだと伝わるのだろうか?」と凄く苦しみました。

悩んだ結果、顧客像にマッチする方を探すことに。

すると中学時代の同級生が運送業の社長をしていると聞きつけて、数十年ぶりに会いに行って、居酒屋で話を聞きながら私はずっとパソコンでメモを取っていました。これを何回か繰り返して、様々な話を聞かせていただきましたし、営業の現場にも同行させていただきましたし、社員の方々とも会話させていただいて、彼らがどんなことに悩んでいるかも理解できて、顧客解像度を高めることができました。

自社ツールを使いこみ、全員で顧客解像度を上げる

ツテを使って、ご友人の運送業の中に入り込んで顧客解像度を高めていったわけですね。とはいえ、これはすぐに真似することは難しいと思うので、マーケターが顧客解像度を高めるための手段について何かございますか?

顧客接点からかなり離れてしまっているマーケターの方にたまにお会いすることがあります。クライアントと直接会話した経験がない、または自社ツールの使い方を知らないといった方が増えているような気がします。しかし、本来マーケターは誰よりもお客様のことを理解しなければなりません。

そこで、弊社のマーケティングチームでは「自社ツールを実際のマーケティング活動に使ってみる」という点に取り組んでいます。

弊社のサービスは、本来はBtoC向けに使うサービスですが、BtoB向けにカスタマイズしてデモアカウントを作成し、実際のお客様に対して提供しています。ここで重視しているのはお客様と同じように自分たちがツールを触り、扱うということです。

もちろん業種は違いますが、お客様と同じように自社ツールを使う経験をしたマーケターがホームページやオウンドメディア、広告を出すことで実感がこもったコンテンツが生まれ、言葉に重みが乗るのではないかと考えています。

やはり自社ツールを触ったことがあるかないかって話すとすぐに分かるじゃないですか。

見聞きしただけの情報ではなく、お客様からの声を直接得るためにエンジニアやバックオフィス部門なども含め、社員全員がお客様の新規商談に同行する取り組みも行っています。

先日、社内のエンジニアの方から「展示会でブースに立って、どういう方が何に興味を持っているか直接会話して様々な情報を得たい!」という嬉しい声が上がってきたので、展示会のブースで実際に接客してもらいました。こうした機会を増やし、お客様と直接話してもらうのも良い手法かと思います。

データドリブンの今こそ「顧客理解」に立ち返る

最後に顧客解像度について悩む方々にメッセージをいただけますか?

いま、簡単に膨大なデータが取れる時代です。

様々なプロダクトが増えてきている時代だからこそ、顧客の隠れた課題を見つけ出すために、膨大なデータだけにとらわれず、データを中間点に置いて、どのくらいN=1(1対1)で近づけるのか。また一歩引いて抽象度を高くして見られるのか。このバランスを崩さないように実体験を話し、信頼性を得る必要があると考えています。

本日はお忙しいところ、ありがとうございました!

Micoworks株式会社とは

Micoworks株式会社は、SNSマーケティング支援を行う企業です。現在はLINEを活用した、コミュニケーションプラットフォーム「MicoCloud(ミコクラウド)」を開発、提供しています。最適なSNSコミュニケーションによって、ブランド価値を最大化し、あらゆるビジネスの可能性を広げます。

大里 紀雄 プロフィール

大里紀雄 プロフィール

Micoworks株式会社 ビジネスマーケティング部 Director
大里 紀雄

大手Web制作会社にてチーフデータアナリストとして、DMPの構築および活用支援、広告運用の業務に従事。マルケトではシニアビジネスコンサルタントとして業種業界を問わず、大手企業から中小企業まで、MAツールの導入や戦略構築支援を行う。 その後、複数の事業会社で大規模カンファレンスの企画運営や、オウンドメディアの構築などのマネジメント、アジアパシフィック地域のマーケティング戦略立案や広報活動など幅広い業務を経験し、現在に至る。

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