第二話では、AI検索の普及によってユーザーの検索行動が変化し、とくに企業がこれまで集客の柱としてきた「情報型クエリ(「〜とは」「〜やり方」など、知識や解決策を求める検索キーワード)」が大きな影響を受けていることを解説しました。
では、この変化に対して、企業はどのような戦略を取ればよいのでしょうか。
企業のビジネスモデルによって細かな打ち手は異なりますが、「Web上の情報発信を通じて顧客と接点をつくり、成果につなげる」というWeb集客の本質において、見直すべきポイントは共通しています。今回は、Webで情報発信に取り組む企業に向けて、検索流入だけに依存しない集客へ転換するために取り組むべき3つの戦略を解説します。
目次
AI検索の普及に伴い、「AIO(AI Optimization/AI最適化)に取り組めば、減少した検索流入を取り戻せる」と期待する企業も増えています。
しかし、この考え方には大きな落とし穴があります。
現在起きている変化の本質は、「AIを使う人が増えたこと」ではなく、「AI Overviewsの回答だけで疑問が解消したユーザーが、Webサイトをクリックしなくなったこと」です。
そのため、AIOは重要な取り組みではあるものの、「AIOを行えば従来通りのSEO流入がそのまま戻ってくる」というわけではありません。
従来、検索結果で1位に表示されたWebサイトのクリック率(CTR)は、検索キーワードにもよりますが17〜30%程度といわれてきました。一方で、AI Overviews内の引用リンクがクリックされる割合は約1%にとどまるという調査もあります。
1位で約30%取れていたクリックが1%になるということは、たとえAIの要約画面に自社サイトが露出したとしても、従来と同等のアクセス数は極めて難しいことを意味します。同じように検索結果の目立つ位置に表示されていても、ユーザーの行動は従来とは大きく異なるのです。
だからこそ、これから企業に求められるのは、「AIに引用されること」だけを目指すのではなく、クリックされないことを前提にマーケティング全体を設計し直すことです。
とりわけ、「情報型クエリ(「〜とは」「〜やり方」など)」からの検索流入を集客や認知の基盤としてきたWebサイトやオウンドメディア では、この変化への対応が急務となります。
そこで本章では、AI検索時代においても成果へつなげるために企業が取り組むべき3つの戦略を紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
AI検索時代でも、コンテンツSEOやコンテンツ制作が不要になるわけではありません。
重要になるのは、検索ボリュームが大きいかだけでキーワードを選ぶのではなく、AIの回答だけでは満足せず、ユーザーがさらに情報を求めたくなるテーマを選ぶことです。
AIは、定義や手順、Yes/Noで答えられるような、答えが一つに定まる問いを得意としています。一方で、実例や体験談、画像、商品同士の比較などが必要な検索では、AIの回答だけではユーザーの疑問を解消しきれません。
たとえば、
このような検索行動では、AIの回答だけでは「自分のケースにも当てはまるのだろうか」「実際の使い心地はどうなのだろう」といった不安や疑問が残ります。そのため、ユーザーはAIの回答を確認した後も、複数のWebサイトを訪れながら情報収集を続けることがあります。

AI検索時代に求められる2つ目の戦略は、コンテンツSEOからコンテンツマーケティングへ発想を転換することです。
これまで多くの企業は、「検索されること」を前提にコンテンツをつくってきました。ユーザーが検索し、記事を読み、最終的に問い合わせや購入につながるという流れが成り立っていたからです。
しかし、近AI Overviewsの登場により、Webサイトをクリックせずに、AI Overviewsのみで疑問を解決するユーザーが増えています。その結果、検索経由でユーザーと接点を持つという従来のモデルは限界を迎えつつあります。
だからこそ、これからは検索だけに依存しない集客設計が重要になります。
コンテンツは、大きく「PULL型コンテンツ」「PUSH型コンテンツ」の2つに分けられます。
これまでのWeb集客は、検索経由で見込み顧客と接点をつくる「PULL型コンテンツ」が中心でした。しかし、AI検索時代は「PUSH型コンテンツ」も組み合わせながら、ユーザーが日常的に自社の情報に触れる機会そのものを増やしていくことが重要になります。
また、それに伴い「評価指標(KPI)」の見直しも必要です。
これまでは、クリック数やコンバージョン数が主要なKPIでした。しかし今後は、検索流入だけで成果を測るのではなく、認知やエンゲージメント、指名検索数、ファンやコミュニティとの関係性など、より広い視点でコンテンツの価値を評価していく視点が求められます。

AI検索時代において、企業のWebサイトやオウンドメディアの価値は「記事が読まれること」だけではありません。AIが回答を生成する際に参照する情報源になることが、新たな価値になりつつあります。
AIは一見、自ら知識を持って回答しているように見えますが、実際にはWeb上のさまざまな情報を検索・参照し、それらを整理・統合して回答を生成しています。つまり、AIの回答は、誰かが発信した情報によって成り立っているということです。
だからこそ、AI時代になっても企業が独自の情報を発信する役割が失われることはありません。一方で、コンテンツがもたらす価値のあり方は大きく変わります。
これまでは、「PV数やクリック数」が主な価値基準でした。しかし今後は、「AIが参照する情報源であること」自体が、新たな価値として評価されるようになるでしょう。
AIに参照されるサイトは、検索エンジンやAIアルゴリズムから「信頼できる情報源」として認識されます。たとえば、AIの回答のなかで自社ブランドが紹介・言及されれば、ユーザーに対して「AIが推奨する信頼性の高い企業・サービス」として認知を得ることができます。さらに、自社メディアを運営している企業にとっても、業界内での権威性が高まることで、記事の監修やタイアップ、パートナーシップといった新たなビジネス機会につながる可能性があります。
クリック数だけを見れば厳しい状況が続くかもしれません。しかし、「AIに参照される情報源になること」は、これからのAI時代において、企業が競合と差別化するための新たな競争力になるかもしれません。
本記事では、「AIでは完結しないキーワードを狙う」「コンテンツマーケティングへ転換する」「AIに引用・参照される信頼できる情報源になる」という3つの戦略を紹介しました。
いずれも共通しているのは、検索流入だけに依存せず、新しい価値やユーザーとの接点をつくることです。AI検索時代に成果を出し続けるためには、従来のSEOの延長線ではなく、AIを前提とした戦略へ発想を転換することが重要になります。
次回は、AI検索で重要となる「引用」と「言及」の違いや、メーカー企業やプラットフォーム企業に求められる戦略を紹介します。さらに、AI検索に対応するだけではなく、自社サービスそのものをAI時代に合わせて進化させる「NLO(Natural Language Optimization)」についても解説します。