【AppBrewインタビュー】パーソナルカラー診断開発秘話 ユーザー目線の価値を「楽しく」追求する先にある、LIPSが目指す未来とありたい姿
2023.01.05
2023.01.05
株式会社AppBrew
今回のSYNCAD(シンクアド)インタビューは、国内最大級の美容プラットフォーム「LIPS」を運営する株式会社AppBrewへ伺いました。
2022年11月、AppBrewは「LIPS」において、カラー&コスメコンサルタント・渡辺樹里氏監修、AR技術を活用した「パーソナルカラー診断機能」をリリース。
堀江慧 取締役CTO、パーソナルカラー診断機能の開発者であるれとるときゃりー氏に、開発に至った経緯から開発エピソード、そしてAppBrewが目指すAppBrewとLIPSの未来の姿を伺いしました。
<インタビューにご協力頂いた方>
株式会社AppBrew
取締役CTO 堀江慧 様
開発者 れとるときゃりー 様
※堀江氏のみお顔出しいただいています
目次
パーソナルカラー診断の開発に至った背景
− 今回、LIPSの新機能として「パーソナルカラー診断」にフォーカスした理由や経緯をお聞かせいただけますか。
れ:もともと「LIPSをさらに多くの人に使ってもらいたい」という思いから、LIPSユーザーのために提供できるものは何があるだろうか、ということを幅広く考えていました。
その中で「パーソナルカラー診断、やりたいよね」という流れがあったのですが、実際の開発となると精度の高いものを作るのが難しいのではないか、というところがネックでした。
どうにか実現できないかと検証していく中で、「AR技術を活用してリップを唇にあてる形であれば、高い精度で診断できるのでは」という仮説が出てきました。これであれば色々な方にLIPSを使ってもらうきっかけになるのではないか、納得のいくものを提供できるのでは、ということで一番有力な候補になりました。
AR以外にも複数の診断方法を検討していた
− パーソナルカラー診断の方法でも色々なパターンを考えてらしたとのことですが、リップ以外にどのような案があったのですか?
れ:実際のパーソナルカラー診断士さんがされているような、胸元あたりに様々な色のドレープをあてながら診断する方法と同様のことをARで診断するパターンや、撮影した写真をAI分析で診断する案もありました。
ただ検討していく中で、やはりリップが一番馴染みやすくてわかりやすいという結論になりました。今回のパーソナルカラー診断では、カラー&コスメコンサルタントの渡辺樹里さんに監修していただきましたが、この段階で「診断結果でどの程度高い精度を出せるか」「ユーザーがやりやすいか」といった面から実現可能性をご相談しました。
そこで「リップであればわかりやすく、精度も高いものが出せるのでは」とご意見をいただいたことで、パーソナルカラー診断の方向性が決まり、開発を進めることになりました。
− 高い精度の診断が出来るか、というのは技術的な面でしょうか。
れ:技術的な難しさというよりは、診断に対してユーザーが納得感を得られるサービスであるか、というところです。ユーザーインタビューや社内でのヒアリングも行ったのですが、例えばAIの画像分析の場合、照明など撮影環境にも左右されるので、しっくりくる回答結果が得られない、というような声があったのです。
ARであればリアルタイムで唇にリップをあてて判断ができますし、自分で選択して診断を進めるので納得感があります。今回リリースしたパーソナルカラー診断の診断フローと診断結果は、専門の方のご経験と知識が反映されているので高精度ですが、ユーザー体験として「納得感を感じられるか」という部分も精度として大事だと思っていたので、重要視した部分でした。
開発時のエピソード
スムーズに進んだ開発、開発前の懸念
− パーソナルカラー診断の開発はどのくらいの期間で行ったのですか?
※インタビュー時の写真撮影時のみマスクを外しています
堀江:実際の開発期間は一ヶ月半ほどです。最初に壁打ちしたのはサービスリリースの3ヶ月程前で、そこからパーソナルカラー診断士の渡辺樹里さんとの打ち合わせを経て開発に着手しました。
− 一ヶ月半という期間は想定通りでしたか?
堀江:弊社の場合、単純な機能であればもう少し早く作ることもあります。
一人が企画・デザイン・開発の複数領域を担当することが多いのが弊社のメンバーや開発プロセスの特徴の一つです。
今回はきゃりーさんが大部分を一人で作ったのですが、それは一人で企画からデザイン、開発まで出来る人物だからです。一人で頭から尻尾まで作ることで、一貫性のある作り込みができます。
れ:半分以上一人で作りました。デザインとフロントエンドを僕が作り、バックエンドは堀江さんに作っていただいています。その他にも、渡辺樹里さんにはたくさんアドバイスを頂きましたし、一ヶ月半の間で打ち合わせと改善を重ねて仕上げました。
− 私も実際に診断してみました。診断は2色のリップから選択を繰り返して診断していきますが、この診断チャートはどのようにして作られたのですか?
堀江:「この色を選んだら次はこの選択項目」という診断チャートは、データを集めて機械学習で作ることをはじめは想定していました。ですが、渡辺樹里さんが診断チャートの理想系をすでに頭の中にお持ちで、データを集める必要がなかったのです。これは個人的によい意味で想定外の出来事でした。
れ:一番不安だったのが「納得感のある診断結果が出せるか」という点です。機械学習でデータを集めるにしても、上手くいくかはやってみないとわからないところがあったので。ですが、最初から完成形に近い診断チャートが出来ており、少しの改善を加えるだけで仕上げる事ができたので非常にスムーズに進みました。
− データを集めなくとも答えがあったのですね。
堀江:そうです。実際にドレープを顔にあてながらの診断を数多くされているので、「こういう色を出すとより有益な情報が得られて、短い診断回数で良い結果が出る」ということであったり「この色とこの色をこの順番で出すと良い」であったりというノウハウをお持ちだったのです。お持ちのノウハウで解決してしまったというのは驚きでした。
開発で力を入れた部分、大変だったこと
− 開発は非常にスムーズに進んだように感じますが、力を入れた部分や大変だったことはありましたか?
堀江:一番時間をかけて注力したのは、パーソナルカラー診断結果の見せ方の部分です。ユーザーへの結果の提示や、診断結果に合わせて「似合う色」「おすすめのコスメ」といった情報を提示する際の見せ方が大事なのですが、幸い納得感のあるカラー診断のシステムが想定よりスムーズに作成できたこともあり、十分な時間をかけて注力することが出来ました。
れ:ユーザーが診断結果をSNSにシェアした時の印象・見え方が大事で、目に留まりやすく、かつパーソナルカラー診断・LIPSに興味を持ってもらえるような画像である必要があります。そういった部分も含めてきちんと伝える必要があったので大変でしたし、診断結果も多くのパターンを用意していたため作成する量も多く、一番時間をかけてこだわり、力を入れた部分ですね。
アイディア出しから開発まで お二人の連携
− パーソナルカラー診断以外にも様々な案が出てらしたかと思いますが、そういったアイディアはどう生み出されているのですか?
れ:私はTwitterで色々な情報を見ているのですが、面白い情報を見つけたら一通りストックしておいて、自分でも試してみたりします。「こういうことをしたら面白そう」ということは常に考えていて、その考えの中から厳選したものを形にしてみる、という事が多いです。
堀江:きゃりーさんは弊社のバズ担当です。コンシューマー向けの「バズる」施策を考える担当。私ときゃりーさんでは思いつくもののタイプが違い、私は事業向けの施策やプラットフォームの仕組みの改善、といったようなことを考えています。
れ:私は具体的なスキームなどを考えるのは苦手なので、考えたアイディアを実際にどう形にしていくか、という部分を堀江さんに落とし込んでもらう、というように進めています。
− お二人それぞれの領域や特性を活かして連携されているのですね。
様々なアイディアの中で「どれを形にしていくのか」という判断はどのようにして決めるのですか?
堀江:私の場合は、自分の企画であれば「何かをやるために新しく考える」というよりも、日頃書き溜めているアイディアリストから一番良さそうなものを選んで取り組み始める、というスタイルです。
一方で他人の企画の場合は、企画への向き合い方やジャッジの仕方が異なります。チームには様々な能力や才能、物の見方を持つ人がいて、多様性の中からイノベーションが生まれるものだと考えているからです。基本的には各人のアイデアの改善にフォーカスしながらアドバイスやフィードバックをして、よりいいアイディアになるようにサポートするという目線ですね。
れ:今回のパーソナルカラー診断も、「実際にユーザーにきちんと使ってもらえそうか」という判断はほとんど私がやっていました。パーソナルカラー診断と決まる前の段階で他の候補も複数あったのですが、一番ユーザーが嬉しいと思う機能であることや、より多くの人に使ってもらえるものはどれかと考えた結果、1番良さそうだと感じたものがパーソナルカラー診断でした。
AppBrewのこれから
− 興味深いお話をたくさん教えていただきありがとうございます。
AppBrewさんが今後目指すところなどを教えていただけますか?
堀江:中期的には、美容コスメのメディア領域においてLIPSが国内の第一想起となることです。その手前の段階でいうと、所謂「美容アカウント」の方々のほとんどがLIPSを使っている状態を作る、きちんと愛されるサービスになることが短期的な目線で目指すところになります。
美容アカウントの方々はコスメや美容に深い興味や知識がおありですし、さらにコンテンツ発信力もお持ちで熱量もあります。そういった方々の殆どがLIPSを利用しており、「日本の美容アカウントはだいたいLIPSを使っているよね」というような状態を作ることができると、おのずと「国内の第一想起」というところが着いてくると思っています。
− そこに至るには何が大事だとお考えでしょうか。
堀江:当然のことではありますが、「ユーザーニーズを捉える」ということです。情報収集の方法がテキストベースのメディア、スマホからSNS、と変わってきた中で、LIPSもSNSのような作りにすることによって上手に参入してきた経緯があります。そこから最近ではショートムービーなどの動画が多くなっていますし、AIやARなどの新しい技術も入ってきています。そういったユーザーのトレンドやニーズの移り変わりをキャッチアップして、LIPSが合わせていくことが大事だと考えています。
− ありがとうございます。その後長期的に考えてらっしゃることはありますか?
堀江:そこから先は不確実性が高くなりますが、toB事業として4年程前からやっているブランドやメーカー向けのマーケティング支援の強化など、toB、toC、メディア、ECといった複数軸で美容コスメ領域のポジションを確立する、というのが美容メディアの第一想起となったあとの話として考えているところです。
顧客体験の頭から尻尾まで、消費者の目線でいうと「物を見つけるところから買うところ」までをLIPSで絡んでいけるようになると、データも集まってきます。そういったデータを再びLIPS利用者への価値提供に活用することも出来ますし、メーカー様やブランド様にもよりよいマーケティング支援を提供することが出来ます。そのような位置に到達することがLIPS、AppBrewが目指すところです。
− ありがとうございます。最後にメッセージなどありましたらお伝えします。
パーソナルカラー診断は、診断に対してユーザーが納得感を得られるように、試行錯誤して開発しました。
診断フローと診断結果は、カラー&コスメコンサルタントの方のご経験と知識が反映されていることもあり、高精度なものになったと自負していますし、実際にユーザーの皆様からもポジティブな反応をいただいています。
ぜひ多くの方に使っていただけたら嬉しいです!
本日はありがとうございました!
まとめ
今回は、国内最大級の美容プラットフォーム「LIPS」で新たにリリースされた新機能「パーソナルカラー診断」のリリースに至るまでのお話や開発時のお話を伺いました。
インタビューの至るところで感じたことは、「ユーザーが求めているものを、本当に価値あるクオリティで届けたい」というユーザーファーストの思いと、ユーザーの楽しさや喜びを探して形にすることを楽しみながら仕事をされている、ということです。
サービスの魅力はもちろんですが、顧客に良いものを届けること、その事によって企業も成長していく、という意識が共有されていることが感じられ、インタビューをさせていただいた私自身も多くの良い刺激を受けることが出来たお時間でした。
今回は貴重な機会をいただきありがとうございました。
LIPSについて
2017年1月にサービスをローンチし、2021年には「コスメ・メイクのクチコミ検索アプリダウンロード数No.1」(出典:App Annie 日本国内 iOS & Android、合計:2021年1月〜12月)を記録。2022年5月には累計900万ダウンロードを突破しました。
リリースより5年目を迎え、新たに「なりたい自分を、もっと自由に」をコンセプトに、性別・世代を問わず メイクや美容を通じて個々人の「幸せ」や「なりたい姿」を自由に追求できるプラットフォームを目指しています。メイクやスキンケアに関する商品レビューやユーザー間コミュニケーション、人気ランキング、新商品情報やプレゼント企画など様々な機能やコンテンツを無料で提供しています。
関連リンク
●株式会社AppBrew
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●LIPS(Android):http://bit.ly/2zfUGAT
●LIPS(WEB):https://lipscosme.com/
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