【広告活動と心理学】モデリングについて

私たちが普段よく目にする広告には、心理学の知見が数多く活用されていることをご存知でしょうか。広告活動とのつながりは薄いように感じますが、実は密接に関係しています。

心理学には「学習心理学」という領域が存在しますが、これは「経験を通じて行動に変化が生じること」を研究対象としている学問です。

そして広告とは、「情報の受け手の行動を変化させること」を目的としたマーケティング手法であるわけですから、必然的に心理学の要素が多分に影響すると考える事ができます。

そこで今回は、学習心理学の「モデリング」を中心に、広告活動における心理学の活用方法について説明してまいります。
 

概念

モデリングとは

モデリングとは、カナダ人心理学者バンデューラ氏が提唱した「社会的学習理論」という概念の中で説明されている学習理論の一つで、他人の体験を観察すること(代理経験)により生じる学習のことを指します。
 

マーケティングにおけるモデリング

モデリングをマーケティングで活用すると、AをするとBになるというモデル(手本)を観察することによって、ユーザー(観察者)に「AをしたらBになれる」という考え方を植え付けることができるようになります。そのため、様々な広告・プロモーションにおいて積極的に取り入れられています。
 

モデリングの例

  • スタイルに定評のある人気女優は、常にあるダイエットサプリを服用している
  • ⇒「同じサプリを使うことで(=A)、女優のようなスタイルに近づける(=B)」という価値観の植え付け。

  • 英語が話せない某ゴルファーは、eラーニングを使い英語が話せるようになった
  • ⇒「eラーニングを使えば(=A)、全く英語が話せない人でも話せるようになる(=B)」という価値観の植え付け。

広告としてよく見るキャッチコピーですが、実はこれもモデリング効果を使っています。
 

有効性について

マーケティングにおいては、人間が受けるモデリング効果の性質を利用して、他者が行動により受けた快刺激をビジュアルで表現することで、ユーザー(観察者)に対してモデリング(模倣学習)を促しています。これを正のモデリングといいます。

他者と同じ行動をすることで対象と同じ状態になれる、という正のモデリングの価値観をユーザーへ植え付けることにより、商品・サービスの購買促進を強く図ることができる点が非常に有効です。

モデリングを活用している著名な施策といえば、某コミット系ダイエットジムのテレビCMです。「太っていた著名人が、ジムに通ってここまで痩せた!」という動的表現を用いて、会員を爆発的に増やすことに成功しています。前述の通り、他者が行動(ダイエットジムに通う)によって受けた快刺激(痩身効果)を可視化して発信することにより、ユーザー(観察者)にモデリングを促している成功例といえます。
 

リスクについて

プラスに作用すると思われがちなモデリング効果ですが、マイナスにも作用します。

人は行動によって快刺激を受けることで正の強化(行動の増加)が働きます。例えば、ダイエットサプリを飲んで痩せた場合、痩せたことが快刺激となり、更にサプリを飲み続けるようになった(=行動が増加した)、などの事例がこれに該当します。

しかし、モデリング効果では、他者の快刺激だけでなく、不快な刺激も同様に学習します。ここでは、「悪性成分が検出されて、健康被害が出た化粧品A」をモデルに考えてみましょう。この場合、ユーザー(観察者)には、「化粧品Aを使用すると、健康被害がでる。」(=だから買わない)という負のモデリング効果が生じます。この場合、問題が改善されても商品購買を回避する傾向は強くなるので、注意が必要です。
 

他の心理学的要素と組み合わせる

前述の通り、モデリングは購買行動を促進するうえで有用な概念ですが、単体で発揮できる効果は十分とは言えません。

プロモーションには多額な予算を使うため、広告主目線で考えると「どうせやるならば効率的に購買行動を促進したい」と考えるのが一般的でしょう。

では、効率的に購買行動を促進していくにはどうすれば良いのでしょうか。
他の心理学的要素との組み合わせについて、仮想事例から一緒に考えてみましょう。

モデリングとハロー効果

あなたは街で二つの広告クリエイティブを見たとします。それぞれ同じ商品に関するクリエイティブですが、デザイン・キャッチが大きく異なりました。
 

  • 「スタイルが良く、知名度のない一般女性を使った広告」
  • 「スタイルが良く、知名度の高い美人な女性モデルを使った広告」

 
これら2つのクリエイティブを見たときに、どちらのキャッチの方に説得力を感じるでしょうか。前者のキャッチでも十分に魅力的ですが、後者の付加価値(ハロー効果)を付与しているキャッチが更に魅力的に感じる方もいらっしゃると思います。購買促進は勿論のこと、ブランディングの観点から考えても後者のキャッチの方が高い広告効果を期待できると考えられます。この様に複数の心理学的要素を取り入れることで、効率良く広告訴求を行うことができるといえるでしょう。

ハロー効果とは
ある対象を評価する際に、対象者が持つ目立ちやすい特徴に影響を受け、その他の箇所についての評価にバイアス(偏向)が生じ、特徴が歪んでしまう現象のこと。後光効果とも呼ばれる。
 

最後に

皆さんが普段、何気なく接している広告・プロモーションには、人の心理傾向を逆手にとり意図した行動を起こさせるためのトリックが使われていたりします。ただし、心理学における「傾向」とは、そう感じる・思う人が多いというだけであり、全ての人が同じように感じるわけではありません。マーケティングに活用する際には、あくまでも参考程度に考えるようにしましょう。




ABOUTこの記事をかいた人

Ryu

syncADの編集担当。インターネット総合広告代理店、株式会社アドスタイルにて営業・人事を経験。現在は、メディア担当として社内研修やsyncADの運営を行っています。心理学や哲学が好きなことから、消費者マーケ記事や哲学的考察記事に飛びつきます。投稿する内容には、心理学的見地からの解説もしてみたいと思っております。