【参加レポ】デジタルマーケティングカンファレンス2019 東京 【後編】

本記事は2回に分けてお届けしています。
【前編】に引き続き、今回はインハウス化の成否をわける重要なポイントについてレポートしていきます。

【参加レポ】デジタルマーケティングカンファレンス2019 東京【前編】

2019年1月31日

インハウスにおける重要なポイント

代理店との付き合い方

株式会社オーリーズ代表取締役の鈴木氏曰く、広告主が代理店と上手く付き合っていくうえで重要となるのが、報酬形態だという。運用型広告における代理店の収益について、代理店の立場からビジネス設計上の問題点を紹介してくれました。

一般的に代理店の収益モデルは、「予算変額型」です。これは、運用している広告媒体の媒体費(予算)に対して手数料が発生するというものです。つまり、「広告予算の減少≒代理店報酬の減少」です。

代理店の投下するリソースは媒体の広告予算に多分な影響を受けます。通常、予算が大きい案件・媒体に多くのリソースを投下するため、広告予算が縮小してしまうと、必然的にリソースも圧縮されます。代理店が大きい予算案件へ優先的に取り組むのは、投下できるリソースが増えて、広告運用の効率化・効果の最大化を図りやすいからと言えます。

要するに、代理店の立場としては、「予算変額型」ではリソースの投下判断が難しく、再現性が取り辛いのです。これを解決するための手段として、インハウスは有効だと説明されていました。

インハウスを含めた課題のレイヤーを上げる

インハウス化するためには、インハウスを含めた広告戦略の課題のレイヤー(階層)を上げることが重要となります。その際、インハウスを構成する要素は大局的に、以下の2つに分けることができます。

・成果評価
どの様に成果を評価するのかという観点

・広告運用
広告運用をどのように内製化していくのかという観点

これらを軸として、段階的にインハウス化を進めていくことが望ましいと説明されていました。

インハウスのプロセスとは

インハウス化は3つのSTEPで進める

段階的にインハウスを進めていくにあたり、まず最初に進めていくことは「媒体運用の移管」だと言います。と言っても、いきなり全てを移管してしまうと、広告運用で効果が出せなくなる傾向にあるため、3つのステップに分けて移管を進めていくべきだと強調されていました。

図1:インハウス化のステップ
図1:インハウス化のステップ

STEP1
代理店が媒体を運用することが望ましい。インハウス化するにあたり、各広告アカウントには業界・ターゲットなどが異なるという固有作用があります。それらを一括りに「こうやって運用すれば大丈夫」とは言えません。

代理店が運用を通じて得たファクト・気づきをドキュメンテーション化して、実行していかなければ、広告運用は軌道に乗らないので、初期段階は代理店運用がベストです。

STEP2
媒体移管が進み、広告の運用作業と運用戦略を分担して行っていきます。

STEP3
媒体移管が更に進むことで、代理店のリソースに余裕が出てきます。そこで、代理店は新しい取り組みを実行できるようになります。業務範囲の変化に伴い、報酬形態を「固定報酬+成果型」へと変更して、代理店のリソースをフル活用できる関係値を構築していきます。

インハウス化できるかどうか

立ちはだかる課題

インハウス化をするにあたり、代理店側には以下の3つの課題が立ちはだかるようです。これらを解決しないことには、インハウス化を推し進めていくことが難しくなると言います。

1.報酬形態
実はこれが一番の悩みどころ。代理店としては、単純に広告配信金額からの〇〇%の手数料という予算変額型の方が分かりやすいです。インハウス化後の報酬形態について、双方で協議の難航が予想できます。

2.支援形態
固定報酬型への移行後、代理店が担当する業務範囲の線引きも難しい。固定報酬型は運用予算をどれだけ伸ばしても代理店の収益にはつながらないので、どこに対してバリューを発揮するべきなのか、判断が難しくなります。

3.取引形態
そもそも広告主側で広告アカウントを取得・保有することができるかどうか。ちなみに、広告代理店を介さないとアカウント開設できない媒体もあります。実施媒体が広告主としてアカウント開設できないと、そもそもインハウス化が困難になります。

運用型広告の代理店に求める価値とは

様々な運用型広告の代理店が乱立する中で、代理店を選ぶときに「求める価値」とは一体何なのでしょうか。とても難しいテーマだと思います。

鈴木さん曰く、代理店に求める価値とは「運用・導入・計測」の3つだと言います。まず、運用は、どのようなロジックで広告運用を行うのかという点を最も重視するべきだといいます。次に、導入については、何故その媒体を導入するのか、中長期的な戦略の企画が求められます。計測では、配信結果からどのように分析して改善を行うのか。代理店はこれらにバリューを発揮していかなければならないとしています。

インハウス化の成否

ここまでを振り替えると、媒体移行・代理店との意思疎通が十分にできていれば、インハウス化はそこまで難しくないように感じます。

しかし、鈴木氏はそんな簡単な話ではないといいます。多くの会社のインハウス化支援をしてきて感じたことは、インハウスの成否を分けるポイントは「人事制度」にあると確信したそうです。

過去、インハウス化で成功した会社の多くは「社内のEC・Web担当者が表彰される会社」だと言います。反対に「社内の担当者が表彰されない会社」は失敗しているそうです。

というのも、表彰されない会社では担当者が退職してしまい、インハウス化はもとより広告戦略自体が失敗してしまったそうです。要は、EC担当者がスポットライトを浴びない企業のインハウス化は難しいと感じているようです。

鈴木さん曰く、EC・広告運用担当者は営業職と同じくらいに重要な職務であり、トップ人材を配置して然るべき重要な業務と認識するべきだと言います。しかし、現状では担当者が軽視されることが多く、人材配置の優先度が低いことが多いそうです。

インハウス化を成功させるためには、会社として本当にインハウスを進めようとしているか、会社の方針が重要になるそうです。私はてっきり、代理店側のインハウス設計にミスがあり失敗すると思っていましたので、広告主側の人事制度が成否を分ける要因だというお話には驚きを隠せませんでした。

インハウス化の成否をわける3つのポイント

インハウス化をするために重要なことをまとめると、以下の3つに集約されると言います。

  • 代理店に求める価値を明確にする
  • 中長期のシナリオを設計する
  • 取引形態・報酬形態をシナリオに沿って設計する

これらの3つが明確でないと、代理店の立場からすると「広告主の求めることが分からないが、とりあえず広告運用を頑張ろう」と小さなあら捜しをするしかないため、非効率に感じます。広告主、代理店の双方が気持ちよく、かつ効率的にインハウスを進めていくためには、欠かせないポイントです。

また、インハウス化をするにあたり、「どこまでインハウスでやるのか」という線引きも大切だといいます。例えば、完全に自社で広告を運用していくのか、それとも自社で広告を運用するが、代理店にはアドバイザーとしてサポートをしてほしいのか。

これを定めておかないとインハウスの着地がズレてしまうとのことなので、広告主と代理店がしっかりと話し合った上で進めていくことが重要です。

まとめ

筆者の感想

インハウスといえば簡単にできる、広告主にのみメリットがあるというイメージでした。しかし、セミナーに参加すると、その考え方が大きく変わりました。お話を聞く中で、インハウスとは中長期的に進めていくものであり、広告主と代理店の双方に、コスト最小化・業務効率化のメリットを提供する画期的な施策であると感じます。

ただし、インハウスを成功させるためには、広告主の人事制度や、代理店の報酬形態など様々な課題が横たわり、解決は容易ではありません。しかし、広告主と代理店が互いに理解を示し、中長期的なインハウス計画を企画・実行していくことによってこそ、真の意味でインハウス化を進められるのではないかと感じています。

最後に

本記事では、デジタルマーケティングカンファレンス2019より一部のセミナー内容をレポートしました。こちらで紹介できなかったセミナーにも、興味深いタイトルがたくさんありました。来年の開催予定は未定とのことですが、アクセス可能な方は来年もぜひ参加を検討してください。